「星明かり」
この星空の下で、星明かりの中、貴方に愛を囁く。
誰も居ない森の中。貴方と私の2人だけ。
人工の光はなく、月と星の光だけで。
お互いの顔も表情もハッキリとは見えないから、その分普段は照れくさくて言えない様な言葉でも言う事が出来る。
「愛してる」なんて、顔が見えたら照れくさくて言えない。
「ホントに2人きりだね。何だか幸せだね」そんな些細な事さえも、普段の私なら貴方に言えなかった。
だから、こんな星明かりの下で、夜の暗さに紛れて、そっと気持ちを告げる。
馬鹿みたいだね、私。
もう貴方には聞こえないのに。
「影絵」
現実の私と貴方は重ならないから、せめて夕暮れの時間帯に、長く伸びた影だけでも貴方と重ねてみた。
これが現実ならいいのに。
余計切なくなって、涙が出てきた。
好きって、どうしてこんなに綺麗で、哀しくて、切なくて、嬉しくて。
自分では持て余すこの気持ち。
でも、とても大切で、消せない気持ち。
「物語の始まり」
何日も、何時間も苦しんで。
人生初めて、って言う程の痛みに耐えて。
よく鼻から西瓜を出す痛み、って例えられるけど、そんなもん一瞬だろ、こっちは何時間も耐えてんだよ!!って暴言吐きたくなる程の痛み。
そして、君が生まれた。
こんなに可愛くて、尊い生き物がこの世に居るんだ、って思ったよ。
絶対に、この子を守ろう、幸せにしよう、と思った。
心の奥から、愛しい、って思った。
今日が、君の物語の始まりの日。
願わくば、君の物語が終始温かく、幸せな物語でありますように。
そして、親としての私の人生の始まりの日。
願わくば、間違えないように、君を守れる物語でありますように。
「静かな情熱」
人に怒る事も殆どなく。
常に人当たりは良く、嫌われる事もなく、でもどうしようもない程に好かれる事もなく。
何かに執着する事もなく。
可もなく、不可もなく。
私はそうやって生きてきた。
人に迷惑をかけない事を信条に、ひっそりと生きて来た。
将来の夢もなく、親の敷いたレールの上をただ黙って走り。
およそ自我と言う物を持たずに生きてきた。
そんな私が初めて執着したのが、貴方。
貴方の全てを知りたい。
貴方の全てを誰にも渡したくない。
貴方の全てを私のものにしたい。
この、燃える様な感情を何と呼べばいいのだろう?
恋?愛?執着?独占欲?
どんな感情なのか、自分でも分からない。
この感情に、どんな名前をつければ良いのか分からない。
ただただ溢れるこの気持ちを、私はひたすら持て余す。
そして、どうすれば良いのか自分でも分からなくなり、そんな自分に苛立つ。
穏やかとか、波風を立てないとか、心をざわつかせないとかが私の生き方なのに、貴方と出会ってからは常に心がざわついている。
毎日が落ち着かず、今までの私の生き方を自分で否定しそうになる。
だから、今のこの状況は、私にとっては到底受け入れられないし、受け入れる気もない。
でも、貴方を見れば心がざわついて、どうしようもならなくなる。
そんな私が悩んで、悩んで出した結論は。
貴方が見えなくなればいい。
貴方の声も聞こえなくなればいい。
貴方が、いなくなればいい。
そして、静かな情熱の使い方を間違えた私は、今檻の中に居る。
「遠くの声」
貴方の声ならば、どんなに遠くても私の耳に届く。
私の心の声も、貴方に届けばいいのに。