「ひそかな想い」
この胸に秘めた想いは、誰にも気づかれたらいけない。
可愛い子供がいて。
不満がないと言えば嘘になるけど、でもそれなりに大事だと思える夫もいて。
仕事も、私生活も充実してて。
毎日の小さな愚痴位は出るけど、でも、決定的な不満や不安はなく、幸せな毎日だと思える。
でも。
私の心の底には、誰にも言えない想いがある。
あの人と別れて、「もうこんなに辛い恋はしたくない」って、心の底から思っていた。
裏切られたし、修羅場もあったし、決して誠実な人ではなかった。
私にも、彼女にもいい顔をして、私も彼女も苦しんだのに、それでも自分が一番苦しいと思う様な、そんな狡い人だった。
決して自分からは結論を出さず、悩み抜いているポーズをして、結局私と彼女に結論を出させる様な人だった。
だから、私は心の何処かで呆れていたし、この人との未来はないな、って思ってた。
疑いながら一緒に居る事なんて出来ないし、居たいとも思わなかった。
だから、私は別れを選んだ。
でも、実際は。
ただ私は臆病なだけだった。
あの人を信じる事が怖くて。
ただ、自分のプライドを守っただけだった。
疑心暗鬼になって、醜い感情を剥き出しにする自分を見たくなかっただけだった。
そして、そうやって自分から逃げた私は。
今でもあの人に対する気持ちを何処かで終わらせる事が出来ないまま。
心の中にあの人に対する一縷の想いや希望を残したまま。
この先、きっと一生どうなる事もなく、でも失くす事は出来ないこの気持ちを。
誰にも言えないまま、きっと一生持ち続ける。
密かに、心の奥底でずっと。
「あなたは誰」
鏡に映る貴方は誰なの?
いつも人の顔色ばかり伺って、言いたい事も言えず。
自分の事は二の次、三の次で、常に「いい子」でいる貴方。
それはホントの貴方なの?
自信を持って、「これが私」って胸張れる貴方なの?
他人の視線じゃなく、他人の価値観じゃなく。
自分を軸に、自分の価値観で、自分の責任で。
そうやって生きて初めて、ホントの自分に出会えるんじゃないの?
そうしたら、例え周りの人全員が、「オマエなんか知らない!!」って言ったとしても、「あなたは誰?」って言ったとしても、「いやいや、これが自分だから」って、自信持って言える自分になれるんじゃないの?
自分を自信を持って「自分」と言える、そんな自分で居られるように、日々生きて行こう。
「手紙の行方」
あの手紙は何処へ行ったの?
大切な、手紙。
誰にも見られたらいけない、大切な手紙。
貴方の事は良く知ってる。
だから、貴方が片付けそうな場所は全部探した。
でも、見つからない。
どうしよう?
あの手紙を人に見られたら。
誰かに見られる前に処分しないと……
でも、これ以上何処を探せばいいの?
ただただ時間は過ぎて行くし、気持ちは焦るし、もうどうしていいのか解らない。
二人だけの秘密の、大事な手紙なの。
何とかして見つけたいの。
でないと、貴方が見つかった時に、私の罪がバレてしたう。
詐欺?横領?自殺教唆?
罪名は解らないけど、兎に角私が困る事になるのは確か。
だから、探さないと。
焦る私は貴方の部屋を漁る。
そして。
ドアが激しくノックされる。
ドアスコープの向こう側には、数人の男達。
家の前には覆面パトカーらしき車。
もう、逃げられない。
何処かで朽ちているだろう貴方が、笑った気がした。
「君の探してる手紙は僕が身につけてるよ」
何処からか、貴方の声が聞こえた気がした……
「輝き」
君はいつも輝いている。
笑顔も、真剣な表情も、悩んでる表情も。
全てが輝いていて、眩しい。
何でなんだろう?他にも可愛い子や綺麗な子はいっぱいいる。
でも、何故か君が一番輝いて見える。
僕が君を好きだから?
そもそも何で僕は君を好きなの?
元々君を好きだと思ったのは、何だか他の子より君が輝いていたから。
これじゃあ、鶏が先か卵が先か、と同じで、君が輝いている、君を好きな理由が解らない。
で、うんと考えた。で、気づいた。
君はいつも誰よりも一生懸命だからだ。
失敗する事もあるし、試行錯誤しながら悩んでる時もある。
決して正しい事ばかりをしている訳でもない。
でも、君はいつも誰よりも一生懸命で。
それに、もし自分の一生懸命が人に迷惑をかけたり、間違っていると気づいたら当り前に謝れて、方向修正も出来る。
いつも全力で生きていて、全力で考えて、全力で走っている。
僕はどちらかと言うと、いつも一歩引いて物事を見るタイプだから、そんな正反対の君が眩しくて。
決して君みたいになろうとも思わないし、なりたいとも思わないけど、でも君の凄さや素晴らしさは解るから。
君の輝きは、ちゃんと僕に届いているから。
だから、君が、好きだよ。
「時間よ止まれ」
今までの人生の中で、何回時間が止まって欲しいと願っただろう。
貴方と過ごす幸せな時間。
子供と遊ぶ時間。
遊んでいる、笑っている、子供や家族や、幸せな人達を眺めている時間。
旅行先で、綺麗な景色を見て、美味しい物を食べている時間。
試験やテストで、残り時間が足りない時にも思ったかな。
家族が死病に冒されて余命僅かと宣告された時も、心の底から思った。
でも、当り前だけど時間は過ぎて行く。
良くも悪くも、止まることも早まる事もゆっくりになる事もなく、一定のスピードで過ぎて行く。
だからこそ、その時間を、一瞬一瞬を、大切に生きなければ、と思う。
時間は止められない。取り返せない。
振り返って、次に同じ事をする時の参考には出来るけど、その時に戻ってやり直す事は出来ない。
だから、かけがえのないもの「今」を、大切にして行きたい。