4月って浮かれてらんねぇよな。忙しくてさ。
嘘? つかないつかない。
オレは、“煙に巻く者”だけど、嘘は言わないことにしてんだ。
大事なこと黙ってるのもやめろ? はは。
黙ってたって、見付ける癖に。
おまえはいつか、誰かと結婚して、幸せに生きていくんだと思っていた。オレの関係ないところで。
でも、現実は違っている。おまえは、オレなんかの手を取って、側で生きていた。
おまえのこと、幸せに出来ないぞ? いいのか?
訊く勇気はない。
万人が求める「幸せ」ってなんだろうな? オレには分からないし、答えも出せない。
おまえは“見付ける者”なのに。自分の幸せを見付けられるはずなのに。オレなんかの隣にいる。
この幸せを、オレは手放せない。
マグカップの絵柄を見る振りをして、毒を盛った。
おまえは、それに気付かずに飲み干す。オレは、内心で笑う。
「それで?」
「は?」
「今更、惚れ薬なんて意味ねーぞ。とっくにおまえのことが好きなんだからよ」
「な……そんな……ばかなこと…………」
ニヤニヤすんな! オレの思惑を見透かすな!
「犯人は、おまえだ」
「うるせー!」
オレは、いわゆる逆ギレをした。
おまえは、いつもいつも、オレのことを分かり過ぎだろ!
世界を改変することに成功した。
この世界は、オレとおまえが出会わない世界。
「 」
小さく、おまえのことを呼んでみた。当然、聴こえるはずもなく、おまえは、オレの横を通り過ぎて行く。
これでいいんだ。おまえの幸せは、オレと出会わないことだから。
本当に好きだったよ。
その目。おまえの両の目が、オレの全てを見透かすみたいで。それが、たまに恐ろしいんだ。
おまえは、“見付ける者”で、オレは、“煙に巻く者”だから。
本当なら、仲が悪そうなもんなのにな。
オレたち、恋人同士なんだぜ?
神様って、随分とシュミが悪りいよな。