ここではないどこかでまた会おう。
その時には、君の好きな物を用意しておくよ
だから今は君に構っていられなくても許してね
■ここではないどこか
君と最後に会った日は雨が降っていて、君の笑顔とは正反対だったのが印象に残ってる。
引き止めてくれれば、一言行かないでって言ってくれれば良かったのに。
笑顔で見送りなんてしないで、それなら喧嘩したまま別れた方がマシだった。
貴方を忘れはしない、なんてよくも言えたもんだね。
謝れなかった後悔がなきゃ、私の事すぐに忘れる癖に。
もうほんっと大嫌い
■君と最後に会った日
子供の頃は、ただそれとなく貴方とはずっと一緒にいられるものだと思っていたので、異国の地から貴方へ向け手紙を書く事になるとは思ってもおりませんでした。
あの日、御家を継ぐ為に励んでいた貴方の邪魔になる訳にはいかないと思い、なんの相談もせず海外へ渡ってしまい申し訳ありません。
ですが、この戦時中の世の中で海外へと渡り、事を成そうと思うと正式な手続きを踏んでいては時間がいくらあっても足りないと、当時の私にはそう思えて仕方なかったのです。
今思い返せば私の世界はそれほど酷くはなかった。
あれほどまでに生き急がなくとも良い道はあったのに、若く、恐ろしい程までに純粋だった私は急ぎすぎてしまいました。
貴方はこうなら無いように願っています。
■子供の頃は
これで良かったのよ、だからそんな顔しないで。
あなたを捨てなきゃ行けない未来なんてこっちから願い下げだわ
過去の私を救ってくれたあなたがいる未来が、私の望む未来だから。
あなたと未来に行けるならわたし、私どんな事でもするって言ったでしょ
あれは今も変わらないわ!
ずうっと変わらない。
ああ、これからが楽しみ!
不安もあるけど。
私たち本当に自由になれたのよ!
全てを投げ出して。
もう戻りはしない!あの頃に戻りはしない!
戻れもしない。
あとはただ未来に向かって走っていくだけ!
ただひたすらに。
信じてついてきてね!
■未来
夏に近づいてきて、いくらか暖かくなってきたとはいえ、あなたの隣にいた頃と比べてしまうとどうしても寒さを感じずにはいられない。
私、朝日が好きなんじゃなくてあなたが隣にいる朝が好きなの。私を愛おしそうに見るあなたが眩しくて、暖かくて好きだったの。あなたもそうだと言ってくれたよね。
あなたが衝動的に走り去ったあの夜は、まだ寒かったのに何も羽織らずに行ってしまったでしょう
風邪をひくといけないから、なるべく早く帰ってきてね暖かいココアを用意してあなたの帰りを待ってるわ。
そしてもう一度ちゃんと話し合いましょう?
どこが良くなかったのか教えてよ。何も分からないまま別れるなんていや。
良くない所を直すからもう一度抱きしめて。
もう一度あの眩しさを私に向けて。
一度だけでいいから。おねがい
■朝日の温もり