私は、君と歩いたこの道を忘れることができない。
さあ行こう
勇気をだして、一歩踏み出してみて
大丈夫
わたしもいっしょにいるよ
ふたりで行こう
前に進むだけでいいの
少しずつ 少しずつ
そうしたら、本当のじぶんになれるから
水たまりに映ったのは
しっかりやっているつもりなのに、私はいつも間違えてばかり。言われた事もこなせず、信頼がどんどん失われるばかり。
周りからの軽蔑の目。みんなできているのに、私はそれができなかった。
今日も失敗。何故こうも生きるのが下手なのかと自分自身を責め続けた。
涙が出た。1回泣き出すと止まらなかった。いっそ、身体中の水分が涙になって外へ出てしまえばいいと思った。
こういう日は、近所にある神社の木の長椅子に座り心を落ち着かせる。この神社は人が滅多に来なくて小さい頃からお気に入りだった、私の一番好きな場所。
ふと、下を見た。そこにはさっきまで降っていた雨で作られた水たまりがあった。
空が映った。神社の木が映った。私が映った。
どれも本物だけど、本物じゃないみたい。
もう1つの空。もう1つの木、そしてもう1人の私。
水たまりに映る空は、虚構の世界のようだった。
灰色で、静かで、水たまりの向こうの世界には、人の気配がしなかった。
「私も、そっちの世界に行きたい。」
もう1人の私に話しかけた。
向こうの私は微笑み、安心したような顔をしていた。
いつでも来ていいよ。と言っているみたいな表情で。
それは苦痛から解放されると共に、恐怖でもあった。
この気持ちは恋か、愛か
それとも…
「ほんとに好きなら束縛しないよー
好きな人の事支配するとかありえないでしょ」
「好きだから支配するんじゃないの?」
「あんたはあの人が自分から離れちゃうのが怖いだけだよ。今までの人たちも。束縛してたでしょう?」
「ああ、うん。だって束縛しないとどっか行っちゃうもん。みんな。」
「だからそれが逆効果なんだってばー。好きなら相手を信頼しなきゃ。」
「わたしってあの人の事どう思ってたんだろう。
好きじゃないのに支配したいなんて思わないんだもん。」
「それもそうね。確かに好きだったのかもしれない。でも、好きなら相手からも好かれたいって思うじゃない?上手く付き合っていきたいとか。でもあんたはそれを考えずに、相手の事を支配したの。」
好きだったんだけどなぁ。
「次こそ、ちゃんとやってね」
「…わかってる」
「約束だよ」
「うん」
約束は、言葉だけの契約。
だから、約束を守ることができなかったら、あーあ。約束した事出来なかったんだって思われるだけ。別に罰ゲームがある訳でもない。(罰ゲーム付きだったら話は別だけど。)
だけど、信頼がなくなって、頼られなくなる。そして必要とされなくなってしまう。
それが嫌なら守ればいい。でも何故守らない人がいるのか。
それは、信頼されなくていい。頼られなくていい。必要とされなくていいと心のどこかで思っているという事。
「そんなの、思ってるわけない!」
「思ってるんだよ、だからやらないんだよ。」
「違う!」
「ふぅん。ならやればよかったのに。」