水たまりに映ったのは
しっかりやっているつもりなのに、私はいつも間違えてばかり。言われた事もこなせず、信頼がどんどん失われるばかり。
周りからの軽蔑の目。みんなできているのに、私はそれができなかった。
今日も失敗。何故こうも生きるのが下手なのかと自分自身を責め続けた。
涙が出た。1回泣き出すと止まらなかった。いっそ、身体中の水分が涙になって外へ出てしまえばいいと思った。
こういう日は、近所にある神社の木の長椅子に座り心を落ち着かせる。この神社は人が滅多に来なくて小さい頃からお気に入りだった、私の一番好きな場所。
ふと、下を見た。そこにはさっきまで降っていた雨で作られた水たまりがあった。
空が映った。神社の木が映った。私が映った。
どれも本物だけど、本物じゃないみたい。
もう1つの空。もう1つの木、そしてもう1人の私。
水たまりに映る空は、虚構の世界のようだった。
灰色で、静かで、水たまりの向こうの世界には、人の気配がしなかった。
「私も、そっちの世界に行きたい。」
もう1人の私に話しかけた。
向こうの私は微笑み、安心したような顔をしていた。
いつでも来ていいよ。と言っているみたいな表情で。
それは苦痛から解放されると共に、恐怖でもあった。
6/5/2025, 12:38:43 PM