お祭り
小さな頃、夏祭りには特別な空気があった。なぜかそこだけがキラキラして見えたのだ。
今はどうだろうか。まだ、私は幼い頃のように夏の空気を感じられるだろうか。
日々家
神様が舞い降りてきて、こう言った。
神様が居るなら、今すぐ降りてきて全世界の人間がハッとするような事を言ってくれ。
例えば「哀れな人間達よ。そなたらの声に応え、気温を正常に戻しましょう」とかさ。
「佐竹、次の行から読んでくれ」
「はい」
バカみたいな事を考るのを止め、俺は教科書の文字を音読し始めた。
「――神様が舞い降りてきて、こう言った……」
日々家
誰かのためになるならば
誰かのためになるならば、そう思って町の人の手助けをしているといつの日からか聖女と呼ばれるようになった。
そんなつもりはなかったが、自分の行いが誰かのためになっている証を貰えたようで照れくさくも嬉しくなった。
しかし、ある日いつものように手を差し伸べると“偽善者”と言われ睨まれた。
頭を強く叩かれたような衝撃と自分のおこないが偽善的に見えていた事への悲しみが体中を巡る。聖女などと担がれて、私は調子に乗っていたらしい。
――傲慢だったのだ。誰かのためになるならばなどと思い、声をかけ手を伸ばすことなど。それは、私のただの自己満足だったのだ。
ぼたぼたと情けなく涙が溢れる。なんて弱い。
きっと本当の聖女なら追いかけてでも助けるはずだ。しかし私の足は地面に縫いつけらたように動かない。
……ああ、町の皆さん、神様。ごめんなさい。私はただの偽善者でした。
日々家
鳥かご
仮に飛べる力を無くした鳥を鳥かごから出すことは出来なくても、一緒に外を見ることはできる。だから私は彼女と散歩した。偽善と思われても構わなかった。
感情のない表情をしていた彼女がある時、私の手を掴んで笑いかけてこう言ったのだ。
「ありがとう」
私は堪らず泣いた。彼女は困惑する。
“珍しいから”それだけの理由で片翼を奪われた有翼人種の彼女は日の光に照らされ、天使のようだった。
いつかこの囲われた偽物の庭から彼女を出してやりたい。本気でそう思った。
日々家
友情
突然の連絡にいつもと変わらない声で応えてくれるのがどれほど嬉しかったか、君はきっと知らない。
日々家