また明日
「また明日」
君が生きる世界が出来るだけ優しく続くように、僕はそう言って手をふるんだ。
日々家
透明
誰にも私が分からないくらい透明になったら、行ってみたかった場所に飛んで行く。
君の生きた町を見て、君に土産話を携えていく為に。
日々家
理想のあなた
理想が理想でなくなった時、私は“大人なれ”の意味を知った。
理想のあなたが理想だったあなたに変わって、見える景色に輝きが無くなったから。
同時に、私も勝手にそれをあなたに押し付けてあなたでないあなたを見つめすぎていた事に気が付いた。
「バカみたい」
涙と共に震えた声が一人の部屋で誰にも届かず消えていった。
日々家
突然の別れ
前触れもなく居なくなると余計に貴方のことが忘れられなくなる。だから、さよならくらい言ってくださいね。
日々家
恋物語
「お前は夢見がちな恋愛ばかり書く。現実味がない」
端羽の小説はいつだって満たされている。どこにも影がなく、まさに綺麗な青春だ。
だから俺はあえていつも以上にキツく言ってやったのだ。しかし端羽は「そうか」とアイスコーヒーを口にした。そこには歪んだ表情も悲しい表情もない。あるのは、動じない穏やかな端羽のいつものそれだった。
「くやしくないのか?」
思わず口にしたそれに端羽は笑う。
「僕の創作が君に合わなかっただけだし、夢見がちなのは事実だからね。まあ、全く傷ついていないと言えば嘘になる。でも――」
俺は端羽の真っ直ぐな視線と言葉に何故か逃げ出したい気持ちに駆られる。
「空想の世界だからこそ、僕は綺麗なものを書きたいんだ」
ふと自宅のパソコンが頭に浮かんだ。俺のいつまで経っても完成しない小説が真っ暗な画面の向こうで俺みたいに捻くれた顔をしている気がした。
「僕もまた読みたいな。君の面倒くさい現実味のある小説」
「……そうかよ」
「これでおあいこさ。それに、僕は君みたいな話は書けない。だから良い刺激になる」
「……ごめん」
「いいよ。そら、人に当たり散らすのが済んだら自分の創作にその迷惑な感情を叩きつけてやれ」
痛いところをつかれ、俺は顔を上げることが出来なくなった。
日々家