枯葉
空が青く澄み渡る早朝、吐く息はわずかに白い。
何気なく寄った公園は、赤みを帯びた枯葉で辺り一面を覆い尽くされている。
それはまるで、夕焼けが足元に降り落ちてきたようだった。
朝と夕が交わる瞬間に、私は立ち会えた気がした。
日々家
今日にさよなら
肌に纏わりつく空気、いつもより多い人の波。そして、遠くから届く屋台の光と香りが特別な空間を作り出していた。
着慣れない浴衣に歩きなれない下駄なんか履いて夕焼けが落ちる手前に、私達ははぐれないように手を繋いで歩きだす。
ガヤガヤと騒がしい中、ひとつ大きな音が体の奥まで響き渡った。「おっ、始まった!」そう言って貴方は私を見て笑う。その顔は、何色もの色に彩られていく。とても眩しくて思わず繋いだ手を少しだけ強く握った。
夜空に開いては光の粒になっていく大輪の花のように、今日という日は一瞬のように終わっていく。
私達はあとどれくらい同じ日々を過ごせるのだろうか。せめて綺麗な記憶のまま、終わりがきてほしい。
けれど、わがままを言えば、変わらずこのまま傍に居てほしい。
――今はただ幸せだけを感じて、今日という日にさよならを告げよう。
日々家
お気に入り
君のお気に入りの音楽が、今日も僕の中で鳴り止まない。
日々家
誰よりも
誰よりも優れていたら、私は多くの人を助けられたでしょうか。
誰よりも強い心を持っていたら、私は一人で困難に立ち向かえたでしょうか。
誰よりも美しかったら、もっと自信を持てたでしょうか。
――けれども私が思い描く輝くような人でなくても、貴方は私を選んでくれたと思うと、自分を少し好きになれるのです。
あの人が待つ場所へ向かうだけで私の胸は高鳴る。新しく買ったスカートが、ふわりと笑うように揺れた。
日々家
10年後の私から届いた手紙
“誰からも好かれる人間がいい。”
ふと、だいぶ昔に使っていたSNSのアカウントを消していなかったことを思い出しログインすると、一番にその言葉が目に飛び込んだ。
短く綴られていたそれは、昔の私が打ち込んだものだった。
鍵をつけて日記代わりにしていたから、これは誰でもない自分自身に向けたものだと分かる。
頭の片隅で、黒く煤けた記憶が這いずってくるのが分かった。私は、深呼吸して思いっきり息を吐き出す。それと一緒に煤がサラサラどこかヘ消えていく様が浮かぶ。
「……誰からもは無理よ」
昔の自分に諭すようにそんな言葉を呟いた。
私は前より少しだけ変わった入力欄に文字を打ち込み、そのままログアウトした。消すのは一旦保留にしておこう。また何年後かの私の意見が気になるから。
「もしかしたら真逆の事言われるかもね」
スマホを机に置いて部屋の窓を開ける。暖かい風が桜の花びらを纏わせながら入ってきた。
――また季節が巡っていく。そして、私の価値観はきっとこれからも変わっていくのだろう。
“案外、みんな自分勝手だよ。だからちょっとでいいから自分を出して生きてみて。”
日々家