鏡をそっと覗いてごらん。
瞳に映ったそのまた向こう。
そこにいるのはほんとのあなた?
ガラスの中を覗いてごらん。
光に透かしたそのまた向こう。
そこにいるのはほんとの私?
世界の狭間を覗いてごらん。
時間を跨いだそのまた向こう。
そこにいたのはあなたと私。
こちらにいるのは、
本当の?
-もう1つの物語-
夜中と夜明けの間。
吸い込まれるような静けさ。
落ちて落ちて。
闇に安らぐ。
目の端の薄明かり。
安堵してまた眠る。
深く深く。
深く。
-暗がりの中で-
冬の午後2時。
何の予定もないひとりの休日にも慣れてきた。
なんて嘘。苦笑い。
手袋せずに出てきたから手が冷たい。
そっか、自分のポッケに入れなきゃ。
苦笑い。
ふらっと立ち寄ったカフェでひと休みしよう。
ケーキセット。
こっちもいいな。これもいいな。
一口ちょうだいはもうできないのか。
苦笑い。
運ばれてきたガラスのポット。
その中で茶葉が舞うのを眺めながら
また苦笑い。
もう一緒には生きられないのに
頭では分かっているのに
いつになったら忘れられるのかな。
-紅茶の香り-
赤い球体がふたつ。
こんにちは。僕、赤いマル。
こんにちは。私は赤いマルです。
僕、黄色い音楽が好きなんだ。
わぁ、私も好き。
私はオレンジ色の話をよく読むの。
それもいいね。僕は青系かな。
そっち系かぁ、今度読んでみようかな。
僕、君の事が好きだな。
私もあなたが好き。
赤い球体がふたつ。
いつの間にかひとつになって
赤いハートになっていた。
-愛言葉-
あなたと初めて会ってからもう15年。
肩から掛けたポーチに入りそうなくらい
小さな赤ちゃんだったあなたも
今ではボストンバッグには入らないぐらい
大きくなってすっかりおばあちゃん。
茶色のモフモフなあなたは
いつも私の冷えた足の上で寝そべって温めてくれる。
もう耳も聞こえてないし
立ち上がれば後ろ足がプルプルしてるけど
それでも毎日元気に散歩して
帰ってくれば部屋を走り回る。
あなたが小さい頃から
元気で長生きしてね、と言い続けてきたから
あなたはずっとその約束を守ってくれている。
ありがとう。ずっと一緒にいるからね。
-友達-