12/12/2024, 8:23:07 AM
お腹が痛い。月一という高頻度でやってくる、生まれた性別を恨む一週間が今月もやってきてしまった。重くて痛いお腹を抑えて、少し前屈みで波が過ぎるのを待つ。
「……どうしたの?」
心配そうに顔を覗き込まれて、慌てて首を振る。
「……お腹痛くて。でも、大丈夫」
「大丈夫な顔色に見えないけど……。薬を飲む?」
目の前のこのひとは、後天的に生まれた性別を除いた無性。除いた理由は知らないし、元々の性別すら知らない。
だからか、こうして性別特有の症状が出た時に、何となく言葉にしづらかった。
「へいき。薬飲む程じゃ、ないから。」
なんでもないフリをして、笑って首を振る。
11/21/2024, 10:39:17 AM
どうしよう。どうすればいい?私、自分のことを自分で決められない。それに気が付いたのは、抑制された村から飛び出した後だった。
反抗なんて許されない環境だったのもあるけれど、何でも人に言われるがまま生きてきた。そんな自分のことが嫌いだった。だから、村から飛び出した。
なのに、だめだった。与えられるものをそのまま受け取っていた私には、外は選択肢が多すぎる。
それらすべてを一人で選べない。自分の責任で、手に取るのが恐ろしい。
「どうすればいいの……」
11/20/2024, 1:25:03 PM
『たからもの』と拙い私の字で書かれている古いクッキー缶を開ける。当時買った雑誌の付録やちゃちな作りの指輪にネックレス、友達からの手紙なんかが入っている。懐かしいものばかりだ。
今『たからもの』とかかれた、からっぽのクッキー缶が目の前にあったとして、私は何を入れるだろう。考えても、何一つ思い浮かばなかった。
羨ましくて眩しくてたまらなくなって、クッキー缶を閉めた。