目が覚めた時には、きみはもう冷たくて。
今回もまた、“失敗”してしまったのだと気づく。
きみとの静かな夜明けは、今回で100000回目。
次は、きみといけたらいいな。
永遠にふたりがあいしあえる、天国へ。
そう思いながらきみの冷たいからだへ手を伸ばした。
その瞬間、私の体は浮上して、
次には不思議な顔をした100001回目のきみがいた。
100001回目の静かな夜明けは、きっと迎えられない。
迎えたくない。
私は大量のおくすりを喉奥まで押し込んだ。
***
目が覚めた時には、きみは、酷く冷えきっていて。
100001回目の静かな夜明けのひかりが
私の目元をきらりと反射させた。
そして、不思議な顔をした100002回目のきみに呟く。
ね、一緒に死のうよ。
この言葉を呟くのも100002回目。
きみがここで断ってくれればこんな繰り返し、しなくたっていいのかも。
でも、きみはやさしいから、そんなことできないよね。
「ごめんね……ごめん。」
それは、100002回目の謝罪。
どうしてきみは謝るのだろう。きっと前はこの言葉の意味もわかっていた。
でも、繰り返すうちにその言葉の裏にある想いを受け取れなくなった。
100002回目なのにまだ見慣れないきみの震える姿を網膜に焼き付けながら、
私の喉は100002回目のおくすりの味を覚えた。
甘くて、苦くてじんわりと、朝の光のような。
きっと夜明けは迎えられない。そんな、希望と絶望が入り交じった味がした。
ねむるふたりを、朝のひかりは燦々と照らしていて。
100003回目の目覚めは、
とてもとてもあたたかかった。
冷たくなったきみを愛おしく撫でながら、
きみの声が私の頭の中をずっと反芻している。
私はわすれない。
きみの冷たさと、朝のひかりのあたたかさを。
きっと、200000回目も、300000回目も繰り返すのだろう。
君は本当に私の事が好きなの?
わからない。口では好きって言ってるけど、
それってほんと?
人の心の中を見たいって、常々思う。
特に、君の心の中。
でも、心って、何処にあるんだろう?
心で物事を決定するなら脳?
それとも、心なんてものないの?
でも、心と、心臓って似てる。
心臓は血液を体に巡らせるから、
きっと君の心は心臓にあるんだ!
なんで嫌がるの?好きなら、心の中だって見てもいいよね?
君から心臓を抉りとって、君の心臓を私の耳に当てて。心と心を合わせて。
これで、好きかわかるはずだよ。
君の脈動は感じ取れない。
もしかして……脈ナシ!?
悲しいな、今度は、腹を割って話そう。
私は包丁を持って、君のお腹に刃を沿わせて笑う。
君は、もう動かない。
きっと、今のこの恋は実らないから。
この花束に私の気持ちを乗せて、最後にするよ。
そして、その花束を貴方に渡したその時から薔薇はじっとつるを伸ばして、気づかないうちに貴方に絡みつくんだ。
雁字搦めになって、何もかも失った貴方の前に私はまた現れて、貴方を私のモノにしちゃうの!
そう。私は黒い薔薇。
花言葉は、
「貴方はあくまで私のもの。」
私からどれだけ逃げても、無駄なんだから。
綺麗な花には棘があるってね。
さあ、私と貴方で、永遠の花束になりましょう?
やさしくしないで。
私が惨めに見えるから。
やさしくしないで。
私は私にさらに絶望してしまうから。
もう、あなたに失望されたら私、生きていけないの。
生きていく為ならば、心の傷だって癒えなくていい。
あなたのそのやさしさが私の心の傷をさらに深くしていくの。
だから、
やさしくしないで。
自分のことって存外分からない。
相手に指摘されなきゃ分からないこともあるし。
「自分のことをいちばん知っているのは自分」とはよく言うけど、その自分でさえ分からないことがあるのなら自分は無いも同然なんじゃないかさえ思う。
でももし、自分のこころのなかに自分も知らないような自分のことが全て書いてる手紙が隠れているなら。
そして、それを自分の積み重なった思い出の中から見事掘り当てることが出来たなら。
きっとその手紙は開いた瞬間紙切れとなってどこかに霧散して、また新しい手紙がうまれるんだと思う。
体裁などどうでもいい。べつに手紙じゃなくてもいい。ただ、いろんな自分を見つけて、自分を自分でいっぱいにする。
そんな時に自分の事をいちばん知ってる人物というのは自分となるんじゃないか。