『命が燃え尽きるまで』
今までにない天災や
新しい感染症が出てきてから
きちんと生きてこられたからといって
きちんと命を燃やし尽くすことができない
いくらか関わりのあった既知のかたはもちろん
見聞きしたかたのことも
不条理とか
歯痒さとか。
想像でしかないそれに囚われて
時々苦しくなる
『本気の恋』
本気じゃない恋はなかった、
と思うし
誰かを本気で好きになったことはないな、
とも思う。
人を好きになるのはこれが最後だろうと
思ったことはあるけれど
会わなくなったらツキモノが落ちたように
すっかり忘れてしまった
誰かを無心に、無欲で好きになれる
無垢さはとうにどこかに消えて
そういう意味では
初恋のサトシくんが
いちばん、本気の恋だったのかも。
『カレンダー』
その仕事の状況により
壁掛けだったり卓上だったり
そのどちらも
書き込みのひとつひとつが
頑張ってたねわたし、と愛おしくて
捨てられない
『世界に一つだけ』
ときどき、自分の身体が不思議に感じる
この、右足の爪も
普段見えない背中も
浮き出る血管も
“わたし”を選んで、そこに存在している
“わたし”を組成してくれていることへのありがたさ。
例えば
歩き過ぎてだるい脚や
ストレスで痛くなる胃や
“わたし”のために頑張ってくれているんだなと
“わたし”なんかで申し訳ないと
ずいぶん、時間が掛かったけれど
わたしを愛せるのはわたしだけ
わたしがわたしを大切にしないと
ということにようやく気づいてきました。
『胸の鼓動』
片付けをしていたら
昔の診断書が出てきた
いまも変わらずある
好きな人が近くにいる高鳴りとか
みんなの前で喋らないといけない緊張とか
そういうものは全く違う
ドクドクッと
数回乱れ
何もなかったように治まる
ときには繰り返されるそれに
もう慣れたつもりではいるけれど
自律できないことがもどかしくて
それでも
そんな不器用な身体が愛おしい