力を込めて
大事な試験、任されたプロジェクト、人生の節目と呼ばれる出来事はいくつか訪れる。
迎える前から準備ができる事もあれば、思わず訪れることもある。
腹を括って、迎えよ。
その先にあるのは成功か失敗か、もしかしたら挫折かも知れない。
ただそれもさらに先に進めば、成功に転じる時もある。成功と信じていたものは本当に成功か?
ただ私に出来るのは腹を括って迎えるのみ
力を込めて迎えるのみ
暗がりの中で
たとえ今が太陽の昇る真昼であろうと、月が隠れた夜中であろうとたいした違いはない
道を見失い、手当たり次第手がかりを探しても何も見つからない
声が枯れるまで叫んでも誰の耳にも届かない
ただもがくことしか許されない
そう気付いた時に初めてなにかを見つけた気がした
足が動かなくなるまで走り、声の限り叫ぶ
姿がないものは助けてはくれない
縋っても助けてはくれない
ただもがいていた身体を起こし
ただ叫んでいた口を食いしばる
そうして溜め込んだ力で立ち上がるのだ
立ち上がって顔を上げる
その先にはきっと差し伸べられた手が待っている
涙の理由
頬を伝う涙を見て思わずそばに行き手を握る
悲しい思いをしないでほしい、いつも笑っていてほしいと願っていたが願うだけでは何も変わらない
新たにつくられた涙の道に、頬を手で包み込んだ
伏せられた瞳からまた涙が流れ落ちる
抱き締めて震える肩を包み込んだ
服に染み込んでいく涙にただ強く抱き締めるしかできない
情けない声で泣かないでと呟くしかできない
奇跡をもう一度
あなたと過ごした日々はいつだって光輝いていた
楽しみにしていた遠出の日も、変わりない毎日も
そばに寄り添うだけで伝わる体温に愛おしさが溢れた
失って初めて気付く
それは永遠に続くものではなかったのだと
永遠に返ってくるものではなかったのだと
写真では愛おしい過去の記憶だけが切り取られ、あれほど毎日聞いていた声ももう思い出せない
叶うならもう一度だけ、あなたが私を呼ぶ声が聞きたい
別れ際に
いつもの帰り道、いつもの見慣れた景色
いつもあなたは振り返り笑顔をくれた
いつもの帰り道、いつもの見慣れた景色
あなたは立ち止まらず、振り返らず去っていった
いつもの返り道、いつもと違う景色