今回は、タイトルを好きな物に変えて投稿させて頂きます。どうしても、何となく今残したかったから。
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『醜悪』
_この一言は言ったら離れて行ってしまうかもしれない、枷になってしまうかもしれない。
だから、なるべくそうならない様に考えながら、言葉を選びながら、本音の真っ直ぐな言葉を心の中で一度捨てながら、恐る恐る、話す。
一緒に居たいからこそ。
こんなにもドロドロで、醜くて、傲慢で、脆くて、面倒で。
こんな私を、一体どこまで貴方は愛してくれるのだろうか。
それが、恐くて堪らなかった。
「君と出逢って、」
君と出逢ってから。
1年と半年が経とうとしている。"もう"なのか、"まだ"なのか。
出逢ってから、だったら学生の頃からと考えればもっとだが、ここでの"出逢ってから"は君と交際してから、という意味とする。
"もう"な気も、"まだ"な気もする。
あの日から、もうこんなに経つ。割と早いかな。その割には、あまりデートも行かなかったね。
あの日から、まだこんなしか経ってない。時間はのんびりだね。もっと上手くやれたかな?どうだろう?でももう無理だね。
スマホの写真フォルダを整理しながら、この1年半の少しの出来事が頭の中を駆け巡る。嬉しかった事、楽しかった事、面白かった事、心配になった事、怒った事。そこに少しの後悔と、怒りが湧いて来た。何で君と付き合ったのか。君と付き合って自分は何を得れたのか。この1年半という自分の貴重な時間はどう消費され、どの位の価値だったのか。いや、何かしらは得れたはずだ。だが、何を得た。そんな思考になってしまう辺り、やはり自分はとことん自分勝手な奴だと、自嘲しながらいくつもの写真を削除した。少し、スッキリした。
これで後は、少し時間を掛けて折を見て別れを告げれば良い。もう、どうでも良い。出来ればこのまま会わずに全てを終わらせたい。会ったら、きっと君は泣いてしまうだろう。また縋ってくるかもしれない。そんな姿をもう見たくない。いつまでも何も変わらない、変えられない、気付かないし、気付けない。そんな君を見ているのが、相手をするのが、もう草臥れてしまった。
君と出逢ってから、少なくとも1年以上は自分なりに誠実に向き合おうとした。向き合おうとしたけれど、向き合っても、無理だった。
もう、無理だった。
「無理」。この2文字が、どれだけ君の心に深く刺さってしまうだろうか。きっと痛いだろう。泣くだろう。もしかしたら病むかもしれない。けれど、もうそんな事を一々心配してられない。最終的にはいつも、自分の気持ちが1番大切だ。自分の人生は、自分で決める。例えばその選択が後にどうなろうと、その時その時は全て自分で決めたい。
後悔の、無い様に。
自分は自分の生きる道を、選ぶ。
さようなら。ありがとう。
「手のひらの贈り物」
今年も雪が降る。窓の外のしんしんと降り積もる雪を眺めながら、老人は飲み物をゆっくり啜る。
もう、ここで独りで冬を越すのは何度目だろうか。寂しいといえば寂しいが、慣れたといえば慣れた。
あと何回、この季節を過ごすのだろうか。
ふと、老人の耳に、何者かが家のドアを静かに小さく叩く音が聴こえた。老人はゆっくりと椅子から立ち上がり、引き摺る足を杖で支えながら、ドアへと歩いて行った。
郵便の方かな、と思いながらドアを開ける。と、そこには誰も居ない。首を傾げ、ドアを閉めようと足元を見ると、そこには小さな生き物が居た。
老人は少し驚き、それからこの思わぬ小さな訪問者を家に招き入れてやる事にした。
ミルクなら飲むかな、と、鍋で温めたミルクを少し皿に乗せ、そっと床に置いてやる。
小さな生き物は、一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに皿に近寄り、ゆっくりとミルクを飲み始めた。
老人と、小さな生き物、1人と1匹が飲み物を啜る音だけが、静かに部屋に響く。
「お前も独りなのかい?」老人は問い掛ける。
が、返事がある訳がなく、ミルクを啜る心地良い音を聴きながら、老人はうたた寝を始めた。
── どれくらい眠っていただろうか。いや、ほんの数分のようにも思える。老人が目を開けると、さっきまで床でミルクを飲んでいた小さな生き物が、老人の膝の上にちょこんと乗っていた。
目を丸くして驚いている老人に、小さな生き物は、その小さな手のひらに乗っていた物を、そっと差し出した。
「…くれるのかい?ありがとう。」
老人はその小さな手のひらの上に乗っていた物を、自分の手のひらへと受け取り眺める。
それは、とても小さくて、キラキラとして綺麗だった。
これは何だろうか、と、老人が生き物の方を見ると、そこにはさっきまで老人の膝の上に乗って居たはずの小さな生き物が居ない。
何処へ行ってしまったのかと、辺りを見回すが、綺麗に空になったお皿が床にぽつんと置いてあるだけで、他に何の気配も無い。この一瞬でドアや窓を開けた気配も形跡も、何も無かった。
老人は目をパチクリさせ、夢でも見たのかと思ったが、老人の手のひらの上には先程の小さな生き物からの、とても小さくてキラキラとして綺麗な贈り物が、確かに乗っていた。
「心の片隅で」
あれから、幾年か経った。
今の自分の隣で笑うこの人は、とても素敵な人だ。きっとこのままいけば、この人と生涯を共にする事になるだろう。
それに対して、何の不安も後悔も無い。
だが、、
あの頃の自分の隣に居た、あの人の事が、今でも、何時迄も、自分の心の奥の片隅で、ずっと燻り続けているのである。
「雪の静寂」
今年もこの季節が来た。
各地で初雪だなんだと世間では言っているらしいが、今年も雪とは無縁のこの地に住む自分からすると知った事では無い。
ああ、今年はどう過ごそうか。
恋人も友人も居ない自分にとって、この季節はより物悲しくなる。せめて雪くらい少しは降ってくれやしないかと、切なげに空を見上げて見るが、今年も一欠片の雪さえも自分の元へ来てはくれないのである。
寂しい、哀しいと思いながらも、頬を伝う涙さえも最早流れない、孤独な時間である。