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「手のひらの贈り物」



今年も雪が降る。窓の外のしんしんと降り積もる雪を眺めながら、老人は飲み物をゆっくり啜る。

もう、ここで独りで冬を越すのは何度目だろうか。寂しいといえば寂しいが、慣れたといえば慣れた。
あと何回、この季節を過ごすのだろうか。

ふと、老人の耳に、何者かが家のドアを静かに小さく叩く音が聴こえた。老人はゆっくりと椅子から立ち上がり、引き摺る足を杖で支えながら、ドアへと歩いて行った。

郵便の方かな、と思いながらドアを開ける。と、そこには誰も居ない。首を傾げ、ドアを閉めようと足元を見ると、そこには小さな生き物が居た。

老人は少し驚き、それからこの思わぬ小さな訪問者を家に招き入れてやる事にした。

ミルクなら飲むかな、と、鍋で温めたミルクを少し皿に乗せ、そっと床に置いてやる。

小さな生き物は、一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに皿に近寄り、ゆっくりとミルクを飲み始めた。

老人と、小さな生き物、1人と1匹が飲み物を啜る音だけが、静かに部屋に響く。


「お前も独りなのかい?」老人は問い掛ける。

が、返事がある訳がなく、ミルクを啜る心地良い音を聴きながら、老人はうたた寝を始めた。



── どれくらい眠っていただろうか。いや、ほんの数分のようにも思える。老人が目を開けると、さっきまで床でミルクを飲んでいた小さな生き物が、老人の膝の上にちょこんと乗っていた。

目を丸くして驚いている老人に、小さな生き物は、その小さな手のひらに乗っていた物を、そっと差し出した。

「…くれるのかい?ありがとう。」

老人はその小さな手のひらの上に乗っていた物を、自分の手のひらへと受け取り眺める。

それは、とても小さくて、キラキラとして綺麗だった。

これは何だろうか、と、老人が生き物の方を見ると、そこにはさっきまで老人の膝の上に乗って居たはずの小さな生き物が居ない。

何処へ行ってしまったのかと、辺りを見回すが、綺麗に空になったお皿が床にぽつんと置いてあるだけで、他に何の気配も無い。この一瞬でドアや窓を開けた気配も形跡も、何も無かった。


老人は目をパチクリさせ、夢でも見たのかと思ったが、老人の手のひらの上には先程の小さな生き物からの、とても小さくてキラキラとして綺麗な贈り物が、確かに乗っていた。

12/20/2025, 9:14:57 AM