誰もいない教室で、
誰かが机に掘った落書きを指でなぞる。

少し丸みがあるけれど、
どこかとげとげしさもあって、
ツルツルしてするするなぞれるところと
ガクッと引っかかるところもある。

今は大人になっているであろう誰かの
同い年くらいだったときの思い出をのせて、
せつなく時間が過ぎていく。

カーテンが夏風を運んできて、
もうすぐ秋がくることを木の葉が知らせた。

いつも仕事では耐えている。

睡眠時間が足りないときなんかは、
言ってはいけないことを言ってしまいそうなくらいだ。

そういうときはトイレに行って、手を水で洗う。
それだけで少し心が清められた気がするし
掃き溜めの言葉たちが流れていく感じがする。

ひとりでいるときに、
好きな人との会話を思い出してなぞるのは
美術の時間で彫刻刀を使った時に似ている。

ページをめくる
新しい毎日がやってくる
同じように見えて、どこかわずかに違う日々

ページをめくる
今日と明日、明後日と来年
ひとつづきになっていて、めぐるめぐる日々

いつも朝通勤時にすれ違う、
犬を抱いた散歩帰りのおじさんと
おそらく出勤途中のおばさん

同じような時間に会うけれど、
微妙に毎日見かける場所は違う。

生きてるって感じる。

夏、やりたかったこと

⋯

なにもないけど、何かしたかった。
何か足りない。

ビタミン⋯？