風に乗ってゆらゆら青空のなか旅をする。
好きな音楽を聴いて、あてもなく
雑貨屋さんで、
石からできたコースターが売っていた。
わずかに歪んだ形が
世界の割れ目を表しているみたい。
何回も薄い夢を見た。
記憶に残らないような薄い夢
最近、気づいたのだけれど、
日常が豊かであればあるほど、
夢の中は淡白で
どこかで自然とバランスをとっているのかもしれない。
この間、動物園でサイを見た。
サイは、大きな木の横で
おもちゃを使って遊んだり、
小刻みにゆっくり体を揺らしたりしていた。
ゆっくりゆっくり体が揺れて
そのたびに少しだけ土が舞った。
自分が仕事をしたり、失恋したり、
美味しいものを食べて少しだけ前を向いたり
たまにまたクヨクヨしたりする間に
サイはこんな風に時を刻んでいたのだと思った。
家中の窓を締めて回る夢を見た。
はやくしないと、外から魔犬がやってくる。
2階の窓も閉めないと、
よじ登って入ってくる。
全部の窓を閉めたら暑くなって、
クーラーをつけなきゃと思った。
そのときに、インターフォンが鳴った。
祖母が帰ってきたのだ。
すぐに鍵を開けて、中に入れると
その後ろからぞろぞろ集団が入ってきた。
何やら家の中で会議をはじめ、
次はこの人たちをどう追い出すかだ、と思っていた。
帰り道、湿度の高い駅までの道のり。
ふと、懐かしい匂いがした。
たぶん、2〜3年前によく使っていた
柔軟剤の匂い。
前を歩く誰かの服から、
ゆるやかに広がって鼻腔に届いた。
にぎやかだった記憶の中の夜
いまは距離があいた人が隣りにいたことを思い出す。
鼻が詰まるような、胸がいっぱいになるような
居心地がいいような
いますぐ逃げ出したくなるような夜
もう会うことはないのね、さようなら、と
ありがとう、これからよろしくね、の夜
もう二度と味わえないような、
これから幾度となくくるような、
もっとワクワクするような、
本当につまらない大したことのないような、
そんな夜が明日も来る。