コーヒーカップに
あと一口分もなさそうなコーヒーが残っている
このままでは終わってしまう、
まだ課題を終えていないというのに
私はセルフのお湯を入れて、
コーヒーカップをいっぱいにした
すると、元のコーヒーより、
色も味もだいぶ薄くなってしまった
コーヒー1杯は350円だけれど、
この使い古されたコーヒーに1杯いくら出せるだろう
渋い顔をしながらすすった
隣では、1杯のコーヒーをお供に何時間もねばる
受験生のような青年がいる
あのコーヒーはすっかり冷めてしまっていることだろう
そんなこんなで、もう5時になってしまった
今日の出来事を日記に綴りながら
静かに涙を流すあなたへ
カーテンの切れ目から見えた星ひとつ
くまのぬいぐるみの目に映っている
願いが一つ叶うならば、化石になってみたい
今世界にあるもののすべては
過去に作られたもの
いまこの瞬間も新しいものが生み出され、
あっという間に過去のものになる
それならば、私はいっそ化石になって
一万年昔のものになりたい
うんざりしながら毎日通う職場があった場所は、
悠々と魚たちが泳ぐ海になり
家があった場所は、草が生い茂り、
巨大な動物が群れをなして闊歩する
お気に入りのカフェは、
水が湧き出て、動物たちの憩いの場になるだろう
そんな新しい過去の地層の中で、
私はひっそり眠っている
小、中学生のときって、
何であんなに卒業式の練習をさせられたんだろうか
呼名の練習やら、合唱の練習やら、
立ち座りの練習とかもしていた。
そのせいか、卒業式では
悲しみになんか浸る余裕はなかった気がする
ただ、大人になってから時々、
卒業式で歌った合唱曲を思い出すときがある
まだ知らぬ未来への不安と
別れのヒリヒリ感が、今となっては愛おしい
秘密の場所は冷凍庫の中にある
冷凍の唐揚げボリュームパックが
実は隠し扉になっていて
その下にはご褒美アイスがいくつか敷きつめられている
アイスが食べごろになるのは、
大体仕事がうまくいかないとき