私とお兄ちゃんで暮らしている子の家は、とても狭い。
お世辞でも綺麗とは言えないし、裕福とも言えない。
狭い部屋で、お兄ちゃんは小説を書く。私は、お兄ちゃんを支えるために外に出て働く。
こんな生活を知って、周りの人は不幸だって、決めつける。
私は不幸じゃない。お兄ちゃんと、この狭い部屋で過ごせて幸せ。
お兄ちゃんが、小説を書く音を聞くのがとても幸せなのです。
小学生の頃経験した、失恋。
それは、可愛らしい失恋なんかじゃなくて。
今でも脳裏にこびりついているような、そんな失恋だった。
正直、そんな失恋を笑い飛ばせるほど私はまだ成長していない。
だから、思い出さないようにしていた。
いっその事、無かったことにしたい。
両想いも、甘酸っぱい学生の恋も、全部全部私とは無縁なんだって、そう思ってしまうから。
どうやって人を愛すのか、好きになるのか、忘れてしまったから。
じめじめ、ぱらぱら。
スッキリしない日が続く梅雨。
私の心も小雨気味。
温かい雨に浄化されたい。
私に、前を向いて歩き出せるようになるような、そんな雨にうたれたいな。
誰かがスポットライトに当っている時、暗闇には何人もの涙が隠れている。
地獄から這い上がれるための蜘蛛の糸は、全員分ある訳では無い。
誰かの成功の裏には、誰かの涙がある。
どんなに頑張っても、他の人に蜘蛛の糸を奪われ、天国には、高みへ行くことは出来ない。
天国と地獄
天国は、誰も争わず、自分の成功に浸っている人達が沢山いる場所。
だから、その人たちは口を揃えて言う。「人と比べてもいいことは無い」と。
もう疲れて、蜘蛛の糸へ叢る人達を見ていたら、そこは本当に、地獄のようでした。
今日はお月様が見えない日。
それでも私は願い続ける。
いつか貴方に、月が綺麗ですねと伝えられる日がくるまで。
月に願いを、届ける。
『私に声をください』