「はい、バレンタイン」
「あ、ありがとう。友チョコってやつ?」
「んー?まぁそんな感じ」
よかった、まだバレてないこの気持ち。
「本当に料理上手だよね~、今度教えてよ?」
「いいよ。じゃあホワイトバレンタインちゃんとお返ししてね?」
「もっちろん!」
あなたが好きだなんて、言えない。
友達としてじゃなくて……恋愛感情として。
でもきっと、この先もずっと気づかれない。
バレンタインは、ずっとこの想いを抱いて、1日過ごすことが多いのです。
きっと、感情がない訳ではなかった。
感情の出し方が分からないから、抑えてただけ。
でも、抑え続けていたら限界が来て。
気持ちが溢れてきて、もう止まらない。
そのせいで、色んな人が集まってきた。
怖い。怖い。今まで、私に近寄りもしなかったのに、なんで。
溢れる気持ちを周りの人にぶつけてしまったら、今度はみんな離れていった。
ほらもう、無駄に傷ついた。傷つけられた。
嫌いという感情が、また溢れてきた。
1000年先、私たちが今住んでいる場所は、どんな風になっているんだろう。
今住んでいる家も、仲間と共にすごした学校も、ほぼ毎日通ったコンビニも、きっと無くなっているだろう。
大して功績を残してこなかった私のことを、誰も知ることもないだろう。
でも、1000年先に私と貴方がまた出会えることが出来たら、素敵かも。
例え貴方が人間で、私が人間以外の動物だったとしても、また貴方と人生を歩めるのなら、どんな姿になっていても嬉しいから。
ねぇ、貴方は嬉しい?
「……答えてくれないよね。でも、ありがとう」
貴方と共に過ごした人生は決して忘れない。
後悔はない。
きっと、また、1000年先も出会えるなら。
賑やかな街へ。
窮屈な部屋から1歩踏み出して、新鮮な空気を吸う。
疲れきったサラリーマン、ケーキの箱を持ってニコニコと笑う親子、一生の思い出をスマホに残しているリア充。
色んな人がいる中で、やっぱり私はちっぽけな存在なんだなって。
でも、なんだか少し、心が軽くなった気がした。
自分を保つために、吐き出せる場所を作るために書いていた日記。
見ているだけで、過去の傷がじんじん痛んで、真っ黒な自分が滲み出てくる。
だから、その日記を、いい意味で笑える日が来るまで、しばらく奥底にしまっておこうと思った。
それから、何年が経ったのか。もしかしたら、何十年とか、それくらい経ってるかもしれない。
どのくらい時間が経ったのか、分からないのはきっと、時間を忘れられるほどの楽しい日々を手に入れることが出来たから。
閉ざされた日記を久しぶりに開いて、過去の自分を少しでも抱きしめることが出来るなら、
自分の閉ざされた心も、開くことが出来るかな。