諦めたい私と、諦めたくない私。
でも、心がボロボロなのは変わらない。
諦めないで頑張れば、光が見えてくるかも。
ここで諦めなかったら、もう後戻りはできない。
そもそも、私は、どこを目指していたんだっけ。
光と闇の狭間で、私は、ひとつの決断をする。
「先生、私、絵を描くの辞めます」
闇が、心を支配する。
自分のバイト代で買った絵の具や筆を、教室に置きっぱなしで私は荷物を持って外に出た。
あぁ、私、さっき上手に笑えてたかな。
頬を触ると、少し濡れた感覚があった。
丁度いい距離が分からない。
丁度いい距離って、なに?
「私は、ただ……」
こんなこと言ったら、ただのわがままになってしまうのかな。
私が泣いている時、私の方に駆け寄ってくれたのは貴方だけだった。
「泣かないで!あなたの笑ってるところ、見てみたいな」
とっても、眩しい笑顔。私は、ぎこちなく笑って見せた。
それから、私と貴方は親友になった。夢を叶えるために、互いに支え合って、時に喧嘩して、でもちゃんと仲直りして……。
そんな私と貴方が、離れ離れになった。
私だけが、夢を叶えられなかったから。
でも、ある日貴方に会いに行った時、貴方らしくない顔をしていた。
涙のあと。いつもの眩しい笑顔が無くなって、なんだかやつれているように見えた。
「私ね、夢を諦めたの。病気なんだって」
そういった貴方は、大きな涙を流してそのまま黙ってしまった。
このタイミングであんなこと言うのは、違うかもしれないけれど、私は、
「泣かないで!貴方の笑ってるところ、見てみたいな」
いつもの眩しい笑顔が、見たいから。
冬の始まり、森の中で小さな狐を見かけた。
雪道を軽い足取りで走っていく姿は、なんだか愛おしかった。
「完治する可能性は、低いです」
その言葉は、あなたをどれだけ傷つけただろうか。
でも、自分の手で自分の人生を終わらせないで欲しい。
分かってる。貴方がどれだけ傷ついてきたのか、頑張ってきたのか。
それでも、私は自分勝手に言うんだ。
「あなたの人生を、あなたの手で終わらせないで」