朝、目が覚めてリビングに行くと、綺麗に包装された箱が机に置かれていた。
差出人は、夫だった。
夫からの贈り物は結婚してから初めてのことだった。
綺麗に包装紙を剥がして、箱を開けると、中には夫が描いた、桜並木の下を歩く私の絵が入っていた。
夫は過去に自信を失って「俺もう二度と筆を握らない」と言って、私の目の前で筆や絵の具を捨てたことがあり、それから絵を描く姿を私は見ていなかった。
「もう一度絵を描こうと思ったんだ」
自室から出てきた夫がそう言った。
「絵で失敗した僕だけど、失敗するたびに立ち上がればいいって言ってくれた君の言葉を思い出したんだ。あの時は、そんな綺麗事言うなって怒鳴ったけど、君の言葉を信じてもう一度、絵を描くことにしたよ。僕は君のような人と巡り会えて幸せだ。改めて、誕生日おめでとう。これからも、ずっと、ずっと大好きです」
私は、この日改めて、夫に恋をした。
この人に私は生涯で何度恋をするのだろう。
何度だって恋をすればいい。
なぜなら、この人は私が巡り会えた運命の人だから。
__贈り物の中身
綴 白_
パラレルワールドの世界があるとして、その世界に生きる自分が今の世界の自分より優れていたとしたら、君はどう思う?
パラレルワールドの世界の自分を羨ましいと思う?
それとも、変わって欲しいと思う?
はたまた、両方か、どっちでもないか。
しかし、今の世界の自分は何で成り立っている?
自分一人で成り立てたか?
違うのではないか?
多くの人の支えやナイフで成り立てたたった一人の自分だろう。
人間は無い物ねだりをするものだ。
その無いものねだりをして、偏見に染まる。
偏見や思い込みをしてあたかも、自分が正しいと思う人間は、1度周りを見てみろ。
きっと、違う景色があるはずだ。
その景色をいつ見るかは君次第だが、綺麗と思わなくても違う景色を見たことをまず褒めよう。
そして、その景色を味わって、自分に馴染ませたい部分は存分に馴染ませて次に進むんだ。
その次に進むタイミングは人と比べなくていい。
君は君のペースで歩けばいい。
寄り道だってしろ。
その寄り道が案外、いい寄り道になるかもしれない。
勿論、必ずってことは無い。しかし、それも経験として大切だと私は思う。
さぁ、君はどうする?
君が選んでごらん。君の人生は君だけのものだよ。
__パラレルワールド
綴 白_
素足のままで
鞄もノートも全部机に置き去りにして僕は逃げ出した
──今となってはもうどうでもいいんだ。
あいつのことも、みんなみんな知らない。
これは僕の逃避行だ。
夢に描いた学生生活なんて、どこにもなかった。
教室に座るたびに胸に痛みが走り、
笑い声の中で自分だけが取り残されていく。
それが毎日繰り返されて、
増えていく手首の傷も、
シアワセなんて四文字もなくなっていった。
きっとみんな偽善者で、いつかは裏切る。
だったら最初から、手なんか差し伸べないでくれ。
希望の光なんて、見せないでくれ。
なぁ、誰かこんな僕を救ってくれよ。
──
あの日、君は最期まで無邪気に笑っていた。
ひまわりのような笑顔を、僕はいまも探している。
けれど、どこを探しても君は見つからないんだ。
授業は今日も行われているのに
君だけが、どこにもいない。
ただ、君の席に置かれた一輪の白い花が静かに存在しているだけだ。
教室は今日もざわめいていた。
君がいなくなったというのに、
僕は助けられなかったというのに。
誰もが笑っていて、
まるで僕だけがあの時に取り残されているみたいだ。
時計の針が止まった君と動き続ける僕の時計
僕は無力だ。
無力な僕は、これからどう生きていけばいいんだ。
なぁ、教えてくれよ──。
__素足のままで
綴 白_
空に溶けるように
昇る煙
桜のように散った人達、生き物達は
天へと昇り
形が無くなっても
記憶に残らなかったとしても、
目をつぶりたくなるような
記憶にも残したくないような
逝き方だとしても
きっと、散り征く命は、
絶えぬことなく
散り、
そして、
新たな生を受け、
声を上げる
人という生き物は儚く脆い
人という生き物以外も儚く脆い
そして、生き死にが絶え間なく行われる世界で今日もいつ止まるか分からない息をする
__空に溶ける
綴 白__
君と僕が出会ったあの日
僕をパパにしてくれた日
澄み渡った青空に響く君の声
毎日感じる君の成長
どんどん君は大きくなって
たまに反抗的な態度も見せるようになったね
全てが初めての経験で大変なことも多かったけど
それ以上に充実して嬉しくて楽しい日々だったよ
そんな君が今度、ママになる
ママという存在が君の中に残っているのか分からないけど
今の君は僕とママが出会った頃にそっくりで懐かしい気分になったよ
今なら許されるかな
少し我儘なんだけど、僕の初恋相手で君のママに直接会って話をしたい
君が僕の元から巣立って、大切な人を見つけてママになるよって
それを言ったら、天国にいるママはなんて言うのかな
拝啓 僕をパパにしてくれたママへ
僕をパパにしてくれて、守るべきもの大切にすべきものをプレゼントしてくれてありがとう。感謝してもしきれない、最愛の君へ
拝啓 ママになる君へ
僕をおじいちゃんにしてくれてありがとう。これから大変な事もあるだろうけど、僕もおじいちゃんとして守るべきものが増えたよ。感謝してもしきれない、最愛の君へ
そう書いて僕はそっと、日記帳を閉じた。
__はじめまして
綴 白__