銀時計

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6/25/2024, 3:38:20 PM

『繊細な花』8/380
今日で、この花を育てて半年になるんだ。
室内に飾っているんだが、中々難儀な奴でね。
環境にうるさいんだよ、この子は。
やはり日光が欲しいのか、カーテンを閉めると決まって不機嫌になるんだ。
そうくると元気な顔が見られなくなって悲しいから、
僕はちょっと窓を開けてやるんだ。

6/20/2024, 2:26:26 PM

『あなたがいたから』16/372
ここまで頑張ってこられたのは、
他の誰でもない、あなたがいたから。
つらい時、あなたが励ましてくれたから。
嬉しい時、あなたも喜んでくれたから。
いつでも、あなたがそばにいてくれたから。

でも、ずっとあなたに頼ってばかりじゃ駄目だから。
あなたが引っ張ってくれていたこの手は、
届かない頂上に伸ばし続けるものじゃない。
大きく手を振って、歩き出さなきゃ駄目なんだ。
他の誰でもない、わたしの力で。

あなたがいるから、これからもわたしは頑張れる。

6/18/2024, 2:02:24 PM

『落下』18/356
あなたと一緒なら、落ちるのなんて怖くはないわ。
だから、この手は一生、離さないでよ。

黒い都会の風が吹き荒ぶ。
遠くに、かすかに聞こえる嗚咽。
頼りないフェンスの向こう、眼下に渦巻く欲望。
絶え絶えに声が聞こえ、後ろを振り返る。
あなたの蒼白な顔が、月光に照らされた。
でも、残念。一瞬、遅かったのよ。
もう、私を支える物は何もない。手を固く握るだけ。
体を宙に投げ出して、次第に視界が加速していく。
鮮血を舞わせながら、落ちていく。

遺体の周囲には、まるで雨が降り注いだような血痕が残っていた。しかし、それよりも奇妙なことは…

5/20/2024, 12:55:25 PM

『理想のあなた』18/338
理想のあなたは、どんな姿をしているのでしょう。
仕事がバリバリできて、人間関係も頗る良好で、
とにかく「デキる大人」といったところでしょうか。

しかし、一度考えてみてください。
それは、自分はどう「あるべき」かを考えてしまってはいませんか?
自分はどう「ありたい」かを抑えてはいませんか?

自分よりも相手、会社、また社会のために。
そう考えてしまうあなたは、とても優しいひと。
けれど、たまの休日には。
やわらかな朝日を浴びながら、コーヒーを一杯。
お好みなら、ミルクと角砂糖を。
自分らしく生きても、誰も文句なんか言いません。

さて、もう一度、聞いてみましょう。
理想のあなたは、どんな姿をしていますか?

5/19/2024, 1:00:42 PM

『突然の別れ』9/320
もう何遍も読み直したメッセージ。
いっそ何も見えなくなればいいと願ったけれど、
文字は未だに滲むことなく残っている。
いつしか私も乾ききっていた。
ステメからはハートのマークが消え失せていて、
背景も知らない景色に変わっていた。

最近、早く家を出るようになった。
最低限の身支度だけで済むようになったし、
もう遅刻ギリギリの電車に乗る必要もなくなったから。
のんびり歩けて最初は新鮮に感じた道も、
今ではそれにももう慣れてしまって退屈だ。

友達が減った。
もっとも、それくらいで居なくなる友達なんてこちら
から願い下げだけれど。
良くも悪くも注目を集める人だったから、
それは逃れられない定めだった。
最初から私目当てじゃないことは分かっていたから、
話だけうまく合わせていた。興味がなかった。
彼女たちもそれを感じ取っていたと思う。

体が軽くなったのを感じる。
登校時間を合わせるのも、痛いやりとりをするのも、
好きでもない話を聞くのも、もうしなくていいから。
そのことだけは、あなたに感謝できるかもね。
別れてくれて、ありがとう。

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