銀時計

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『突然の別れ』9/320
もう何遍も読み直したメッセージ。
いっそ何も見えなくなればいいと願ったけれど、
文字は未だに滲むことなく残っている。
いつしか私も乾ききっていた。
ステメからはハートのマークが消え失せていて、
背景も知らない景色に変わっていた。

最近、早く家を出るようになった。
最低限の身支度だけで済むようになったし、
もう遅刻ギリギリの電車に乗る必要もなくなったから。
のんびり歩けて最初は新鮮に感じた道も、
今ではそれにももう慣れてしまって退屈だ。

友達が減った。
もっとも、それくらいで居なくなる友達なんてこちら
から願い下げだけれど。
良くも悪くも注目を集める人だったから、
それは逃れられない定めだった。
最初から私目当てじゃないことは分かっていたから、
話だけうまく合わせていた。興味がなかった。
彼女たちもそれを感じ取っていたと思う。

体が軽くなったのを感じる。
登校時間を合わせるのも、痛いやりとりをするのも、
好きでもない話を聞くのも、もうしなくていいから。
そのことだけは、あなたに感謝できるかもね。
別れてくれて、ありがとう。

5/19/2024, 1:00:42 PM