鳥には翼がある。
其の翼は、何処へだって行ける。
この窓から見えるあの空の向こうまで。
嗚呼、私も遠い遠いあの空の向こうまで行きたい。
翼で無くとも丈夫な身体があればいいのに。
私の余命はあと数年。
皆は私に色んな写真を見せてくれる。
色んな所を知れるから嬉しい。
でも、ね?
私は自分の目で、身体で、感じたいの。
風の音、その場の雰囲気や食べ物、香りを、
身体で感じて見たいんだ。
無理なのは知ってるけどね(笑)
来世は鳥になりたいな。
あの遠くの空まで飛んで行けるから。
見たかった街並み、自然を空から見てみたいな。
この世への未練が
ちょっぴり残っちゃった。
お題〚遠くの空へ〛
拝啓、ーーーさんへ。
今年も春爛漫という言葉がぴったりなほど、さくらが咲き誇る季節となったでしょう。
其方は如何お過ごしですか。
ところで、現在のーーーさんはどのような日々を過ごしておられますでしょうか。
以前、と言いましても10年程遡ってしまいますが、
その頃の貴方はとても真面目で冷静な方でした。
現在の貴方を知ることが出来ないのは非常に残念です。ですので、こうして手紙を書かせて頂きました。
これを読んでいる時、貴方はとても驚くでしょう。
何せ高校時代の時からサボる事が多い僕の事ですからね、自覚はあります。
きっと貴方は、毎年この季節になると思い出と共に後悔をされているでしょう。
ですが、後悔はされなくて結構ですよ、何せ僕の独断ですからね。
貴方が悔やむ必要性は何処にもありません。
ですので、貴方は僕の事など、
"自分と正反対な幼馴染"とだけ記憶してください。
あの時の事はもう忘れてください。
こんなにも自分勝手にしてしまい申し訳ありません。
こんな僕の傍に居てくれて、嫌って程感謝してます。
あの時止めに来てくれてありがとう。
あの時泣いてくれてありがとう。
あの時話を聞いてくれてありがとう。
あの時怒ってごめん。
あの時約束を破ってごめん。
あの時突き放してごめん。
こんな幼馴染で、
ごめんね。
君の幼馴染 より、
貴方の事が好きだった。
誰よりも、ずっと。
けれど貴方の目にはあの子しか写っていない。
私の親友の、あの子。
あの子は気付いていない。
彼からそんな目で見られていることを。
けれど私は知っている、彼の気持ちを。
どうしたらいいかな、?
この気持ちは彼に伝えてもいいのか?
彼の気持ちをあの子に教えた方がいいのか?
否、何もせずにいた方がいいのだろう。
片思いは苦しい。
けれど親友が自分のせいで悩むのも嫌だ。
だからこの思いは誰にも伝えない。
誰にも言わない事実にしよう。
嗚呼神様、何故貴方はこんなにも残酷なのでしょう。
お題〚誰よりも、ずっと〛
息苦しい、辛い、しんどい。
毎日が苦痛だ。
お母さんは殆ど毎日居ない。
浮気相手に会いに行っているんだって。
お姉ちゃんはもう会えないんだって。
家出をしちゃったから。
お父さんは夜に居たり居なかったりする。
お外で遊んでるんだって。
お父さんが家から帰ってきたら、僕に怒鳴ってくる。
殴ったり、蹴ったりしてくる。
でも、お父さんの機嫌を損ねちゃうともっと痛い。
やめてって言っても聞いてはくれない。
毎日毎日、しんどいよ。
たまに帰ってくるお母さんは、僕を見て、
『汚いわね、あっちへ行ってなさいよ』
『醜いわね。なんでこんな見た目なのかしら』
お母さんは僕の事が嫌いみたいだ。
お姉ちゃんは家出をした時に、
『ごめんね。でも、私も耐え切れないのよ。』
ゴメンなさい、ゴメンなさいってずっと言ってた。
お姉ちゃんは何も悪くないのにね。
この家に僕の居場所は無いのかな?
これからも、ずっと。
こんな毎日がこの先もずっと続くのかな?
嗚呼、お姉ちゃんが家出した理由が今わかったよ。
誰か助けてくれないかな、?
無理な願い事かもしれないけどね (苦笑)
お題〚これからも、ずっと〛
一人の患者が窓から夕日を見ていた。
『沈んじゃった。また一日が終わったね。』
彼女は寂しそうに笑っていた。
「終わっちゃったね。」私も笑った。
彼女の余命はあと一年半位と医者に言われていた。
助かる可能性なんてほぼ無いに等しかった。
『やだなぁ』彼女はそう呟いた。
「そうだね、私もやだよ。」貴方が居なくなるのは。
彼女は入院する前に、私を遠ざけようとした。
でも、私は貴方が泣いているのを知ってしまった。
学校には転校と言って辞めていた。
私は出来るだけ残り少ない貴方と居たかった。
でも貴方は、『学校での話、聞かせてよ。』
なんて言ってさ。
だから午前中だけ行って、お昼は貴方と食べる。
そんな生活をしていた。
一年たったある日、貴方はよく夕焼け空を見るようになった。
残り半年。
医者に言われた通りならば、残された時間は少ない。
貴方は何時も沈んでく夕日を見て、
『もっと生きていたいな』
『ホントに死んじゃうのかな』
そんな事を言う。
やめてよ、実感しちゃうじゃんか。
もう少しで貴方が居なくなることを。
貴方と見ている夕日は、沈んでいく夕日は、
とても綺麗で、貴方の命の灯火のよう。
何時かは消えてしまう、綺麗で、寂しいもの。
あの太陽のように、貴方は戻っては来ない。
夜が来て、朝になれば太陽はまた、輝いている。
けれども貴方はもう居ない。
私はもっと、貴方の傍に居たかった。
夕日を見る度に思い出す。
夕日が沈んでいくのを見る度に。
貴方と過ごした思い出を。
貴方の持っていたカメラの中には、
夕焼け空を眺めている私の写真があった。
お題〚沈む夕日〛