六花

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一人の患者が窓から夕日を見ていた。
『沈んじゃった。また一日が終わったね。』
彼女は寂しそうに笑っていた。
「終わっちゃったね。」私も笑った。
彼女の余命はあと一年半位と医者に言われていた。
助かる可能性なんてほぼ無いに等しかった。
『やだなぁ』彼女はそう呟いた。
「そうだね、私もやだよ。」貴方が居なくなるのは。

彼女は入院する前に、私を遠ざけようとした。
でも、私は貴方が泣いているのを知ってしまった。
学校には転校と言って辞めていた。
私は出来るだけ残り少ない貴方と居たかった。
でも貴方は、『学校での話、聞かせてよ。』
なんて言ってさ。
だから午前中だけ行って、お昼は貴方と食べる。
そんな生活をしていた。

一年たったある日、貴方はよく夕焼け空を見るようになった。
残り半年。
医者に言われた通りならば、残された時間は少ない。
貴方は何時も沈んでく夕日を見て、
『もっと生きていたいな』
『ホントに死んじゃうのかな』
そんな事を言う。
やめてよ、実感しちゃうじゃんか。
もう少しで貴方が居なくなることを。
貴方と見ている夕日は、沈んでいく夕日は、
とても綺麗で、貴方の命の灯火のよう。
何時かは消えてしまう、綺麗で、寂しいもの。

あの太陽のように、貴方は戻っては来ない。
夜が来て、朝になれば太陽はまた、輝いている。
けれども貴方はもう居ない。
私はもっと、貴方の傍に居たかった。

夕日を見る度に思い出す。
夕日が沈んでいくのを見る度に。
貴方と過ごした思い出を。

貴方の持っていたカメラの中には、
夕焼け空を眺めている私の写真があった。


お題〚沈む夕日〛

4/7/2023, 1:34:01 PM