NoName

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11/26/2024, 7:12:51 AM

 紅葉の盛りを越えた木が、頭上にあった。
 地面に視線を落とす。
 木漏れ日が、輪郭のぼやけた丸となっている。風で枝葉が揺れるとともに、ささやかに動いている。オレンジの色調が、枯れ葉や芝にやさしく重なっている。
風とともに、光がつながったり離れたりしているところを眺め続けることは、意外にも飽きなかった。
 
 しばらくして、少し眠っていたらしい。太陽が少し上がっている。思い出したように、手の中にある時計を見ると、正午が近くなっていた。
 車椅子を動かしながら、周囲を見る。待っていた人はまだいなかった。時間にルーズなことは予想していたけれど、寝かせたままにしてくれたのかもしれない。電話をかける。すぐに出てくれた。
「やあ、今どこにいるかな」
「散歩中だよ。どうしたんだい?待ち合わせの日は明日だろう」
「あっ。そうだったっけ」
あの人は軽快に笑った。
「珍しく抜けているね。せっかくだ。今から向かうことにするよ。軽食も買っていこう。今、大丈夫かい」
「うん。ありがとう。じゃあね」
「またねー」
 電話は切れた。勘違いをしていたらしい。
 話をして少し覚醒した。頭上を見る。チラチラのぞく太陽の光と、その光に透かされたあかい葉の色調に、少しの満足を感じた。