『 大事にしたい 』
別れてよかったと思ってる
けどね、
貴方と出会って、別れて、切れてしまった1つの縁は、大事にしたい。
別れてから、嫌なところはいっぱい出てくるけど
でも貴方に出会う意味はあったんだと思う。
貴方が好きと言ってくれた気持ちを、心から大事にすること
きっとわたし、できてなかった。
まだまだ未熟だった。
自分の悪かったところを見つめ直して、次に出会う人との縁は一から大事にしたいなって思うよ。
ひとつ成長をさせてくれて本当にありがとう。
『 時間よ止まれ 』
眠い目を擦りながら時計を見ると、目覚ましが鳴る10分前に起きた。
いつもなら彼が先に起きてるのに
「めずらしい」
彼が起きる前に歯磨きとか身支度済ませようと思ったけど
寝息を立てて寝る君の姿が愛おしくて、愛おしくて
じっと見つめた。
「あ」
こんなところにホクロある、まつ毛意外と長いなぁ、肌気にしてからどんどん綺麗になってるし
私が教えたスキンケアちゃんとしてて偉い
あぁ、ほんとは君の第一声が聞きたいのだけれど
このまま君の顔を見つめるお仕事もありだな
時間よ止まれなんて時計に願っても針は動き続ける。
もうちょっとだけ、君の横楽しませてね。
『 香水 』
香水が好き
シュッとワンプッシュ
自分の好きな匂い
キンモクセイに、スズラン、薔薇、百合、すみれ
レモンに、桃、オレンジに、ブドウ
スタンダードな石鹸の匂いも好きだ。
色んな香水と出会ってきた私がたった一つ、買えない香水がある。
どこを探しても見つからない。
どこのお店にも売っていない。
ただ1人の特別な匂いを知ってる。
それは君の匂い。自然のままの君の匂いだ。
好きになってから今日まで、ずっと君の匂いが離れなくて。
心地良い君との時間が何よりも好きで、ずっと一緒にいたいって思ってた。
でも、私には買えなかったのだ。
君の心を掴むことは出来なかった。
『言葉はいらない、、ただ』
ただ、会いに来て欲しかったなって。
デートしたかったなって。
『 向かい合わせ 』
今日はいつもより早く電車に乗った
いつもより少ない乗客数に、いつもより静かな電車
私は人の少ない席に座って、カバンから一冊の本を取り出す。
「春に君に」という小説だ。
主人公がヒロインに恋をして、でも主人公にはとある難病が見つかって、余命判決を下された。
それは主人公が高校を卒業する頃だった。
主人公は残りの余生を楽しむために、ヒロインに猛アピールするんだけど、中々振り向きはしない。
けれど2人の中はどんどん縮まって、ヒロインが主人公に恋心を寄せ始めていた頃、主人公は倒れてしまったのだ。
病気のことも知られてしまい、ヒロインは毎日時間がある限り病室で彼との時間を過ごした。
病室のドアを開くと、主人公はいつも笑顔で出迎える。
かっこ悪い自分の姿を見せないために、本当は辛いくせに、無理してヒロインに笑いかける。
それを悟っていたヒロインは冷たく彼に当たるが、彼はずっと笑い続けていた。
「 君が好きだよでもごめん、僕は 」
「 告白なんてしないでよ!私はあんたのことなんて! 」
「 ……僕は君の隣を一緒に歩けそうにないんだ 」
「 … 」
分かってた、彼がもう長くは無いのも。
でも、彼が好きだという気持ちには嘘は付けなかった。
「 貴方の隣には今誰がいるの? 」
「 …え 」
「 私がいるでしょ、歩けなくてもこうやって貴方の傍にいるから。私の隣は君専用の特等席なんだから」
だから……
読んでいる途中にガタンと電車が大きく揺れて、停車する
読んでいる文字に目を離し、乗客口に目をやった。
いつもより少ない乗客数、に彼は居た。
なんで、いつもより早い時間に乗ったのに。
彼も驚いていた、彼はいつも私と向かい合わせの席に座るのに、今日は隣に座ってきた。
「 おはよ 」
「 …おはよう 」
「 なんでいつもより早く乗ってんの 」
「 それは、こっちのセリフ 」
「 俺に会いたくなかったから? 」
「 そうかもね 」
「 奇遇だ、俺も君に会いたくなかった 」
電車が揺れ始めて、私はまた小説に目をやる
彼もカバンから小説を取りだして読み始めた
私も彼らみたいに気持ちが伝えられたら、でも出来なくて
卒業式の今日、気持ちを伝えぬまま終わろうと思っていたのに。
君は乗ってきた。
いつもより早い時間なのに、いつもと変わらない君が乗ってきた。
隣でページをめくる音が聞こえる。
君におすすめした小説、読んでくれていたんだ。
しかも終盤、いちばん面白いところ。
あぁ、私は気持ち伝えられそうにないや。
絶対後悔するだろう、後悔するためにいつもより早く乗ったのに。
私に後悔させないために君は乗ってきたの?
小説にもあった「 一度きりの人生を 」
その言葉を思い出す。
「 あのさ 」
「 ん?なに 」
「 私さ…あなたのこと 」