梅雨
したり、したり、と嫌ぁな雨が降ってる。
窮屈な洞窟の中揺ら揺ら頭を揺り動かす。
鼻唄はいつの間にか、仲間たちとの合唱へ変わった。
閉塞的な洞窟の中は高揚した空気に包まれた。
湿気た空気が熱気で上書きされる。
楽しげな唄い声と拍を執る指の音。
寝覚めの悪いドラゴンも一緒だ。
洞窟の囚人たちはいつまでも。
梅雨はいつまでも。
雨は止まない。
終わりなき旅
暗い廊下にコツリ、コツリ、と足音が響く。
足音はゆっくりと。でも、歩みは止まらず。
背中に背負われている少女は未だ目を開けず。
息も乱さず、足音崩さず、ゆっくりと歩みを進めていく。
先は見えない。
終わりなどない。
終着点は、己の死のみ。
暗い廊下にコツリ、コツリ、と足音が響く。
これは、終わり無き旅路。
虚無を進む。
月に願いを
生まれて初めて見た月はきれいなまん丸お月さまでした。
濡れた体を拭かれているとき、カーテンがひらひらと翻ったんです。
私の記憶の中では月にはうさぎが住んでいるそうです。
流れ星にお願い事を込めると月に届いて、うさぎたちがそのお願い事を叶えるお手伝いをするんだそうです。
私はまだ接続が不安定なので音が聞こえませんでした。
だから私は一番最初にお願いしました。
コエがほしいです。
失われた時間
ふと気づいた瞬間。
突然足元が消えたような感覚がした。
瞬きもしないうちに戻ってくる景色と人たち。
何事もなかったかのようだった。
私は後ろを振り返った。
何か落としたような気がして。
何か忘れてきたような気がして。
数分前の出来事が、伽藍堂になっている。
空虚な思い出が喰われていく。
そこは失われた時間帯だ。
初恋の日
30歳の誕生日
今までにないくらいの衝撃を喰らいました。
多分、いや、絶対。
外国産の目鼻立ちにビビッときた。
今まで見た中で最もクールだ!!!
……柄にもなく動揺してしまった。失礼。
多分、あとにも先にも一度しか無い
これが私の初恋だった。