光と闇の狭間で
眼の前には、吸い込まれそうな闇。
後ろは、振り返れないくらい眩しい光。
「……何ココ」
さっきまで布団で温まっていたのに
気づいたらこんな場所にいる。
意味がわからない。
というか
「───寒い!」
そう、とてつもなく寒い。
「何だよマジで…何処だよここ、今真冬だぞ?
暖房ねぇのかよ……」
腕を擦りながら周りを見渡す。
当然、暗闇の中なのだから何も見えない。
だからといって振り返ると
今度は逆に眩しすぎて何も見えない。
「あぁ゙〜!マジでここ頭悪い空間だなぁ!
そもそも何でこんなとこに居ンの!?オレ!」
叫んでみても木霊さえ帰ってこず。
本気ですべてを呑み込みそうな闇だ。
「───あ、」
何かを思いついたようだ。
「寝ちゃえば良いンじゃね!?多分寝てから
ここに来たんだし、寝れば万事解決じゃね!」
なんとも頭の悪い思いつきだった。
それでもこの状況でマトモな判断を下せるのは
極々少数だろう。
「じゃ~オヤスミどっかの誰かさーん……」
寝てしまった。
……本当に寝てしまった。
「スゥ、スー…」
ヤスラカな寝息とともに
後ろの光が強さを増す。
やがて男を呑み込みフッと消える光。
ソコに男は居なかった。
暗闇はやがてフローリングに敷かれた布団を吐き出した。
そこにも、男の姿は無かった。
何時でモ光が安全だと思わなイことだネ
教ぅ訓,ダネ!
落ちていく
白い翼を見た
美しいその人
掴もうと手を伸ばした
呼吸が空回る
人形みたいに瞼が動かない
スルリ、と
頬に
その真っ白い指が
撫でるように
「───────、──」
真っ白な肌に
赤い唇が映える
「──?─────」
間違い無い
やっぱり
僕の
天使だ
「────、──、───────────。」
途端
溢れんばかりの光が
僕等を包む
「────」
息が停まる。
行かないで
喉の奥に出かかった言葉を
涙と一緒に押し込めて
僕にできる精一杯の笑顔で
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
仲良しだったクラスの一人
あんまり馴染めない僕にも
声をかけてくれた。
ほとんど毎日一緒に帰って
土日は毎回同じ公園で
笑顔の絶えない毎日だった。
彼が風邪を引いて休んだとき
別に楽しくなかったわけじゃないけど
ちょっとだけ味気無い
みたいな。
やっぱり彼が特別なんだ
一人になった帰り道で
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ
そう思った。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
朝早くから空港に行くために
車に乗り込む君が見えた。
こちらに気づきもしないで
シートベルトを付けている君を
僕は恨むよ
せめてさよならくらいは言わせてよ。
喉の奥に出かかった言葉を
涙と一緒に押し込めて
できるだけ小さく手を振ってみる
車が走る少し前
目があったのは
本当のことだと思いたい。
忘れたくても忘れられない
にゃう、と猫が一鳴き
真黒い猫が足元に擦り寄って来る。
此頃、また寒い季節がやって参りました。
そうすれば私は、あの時の事を想出します。
其の頃もまた、寒い季節でした。
同じ様な真黒い猫に擦り寄られて
もしかしたら、何て思ってしまう。
あンたはそんな事
思いやしないだろうけど
私だって忘れられない事ぐらい
在るもんです。
絶対、忘れてなんてやるもンですか。
鋭い眼差し
真昼のジリジリと照りつける太陽から逃げるように
手足が震えてまともに走れない
呼吸も疎かになってきた
覚束ない足元を狙うように
ズサっと受け身などとれるはずもなく転んでしまう
身体中から血が絶え間なく流れ出す
このままでは格好のエサだ
太陽に向けている首元はジリジリと熱くて
息を整える暇なんてなく
視線を上に上げて必死に足を上げる
眼の前には
鋭い眼差しで僕を突き刺すアイツがいた。
走る
「頭上にご注意ください」
と、アナウンス