お題:声が聞こえる / No.3
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聞こえる、聞こえる。
怒りに満ちた人の歩み。
今日は時間通りにやってきた電車。
独りを宥める鈴虫。
閉め忘れられた冷蔵庫。
聞こえない、聞こえない。
母からの頼まれ事。
先生からの挨拶。
映像の中の人。
吠える愛犬の本心。
ピコーン。
涙の匂いが充満した寝室に、
着信音が1回、響いた。
どうせまたチェーンメールだろうと、
ぞんざいにスマホを見る。
毛布を払い除けた。
あなたからの着信。
何日ぶりかの、あなたとの電話。
嗚呼、聞こえた、聞こえた。
あなたの声が聞こえる。
優しい声。
可愛らしい声。
愛しい愛しいあなたの声。
沢山の聞きたくないことを聞いて、
硬い殻を被った私の耳は、
愛しいあなたに解されて、
また聞こえるようになりました。
聞かせて、聞かせて。
もっと、あなたの声を。
お題:秋恋 / No.2
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毎年祖父の家では、金木犀の花が咲く。
亡き祖母の形見で、
私が生まれた日、祖父の家に植えられた。
何処の金木犀より一際美しく、大きい。
_______小さい頃からの、私の想い人。
特に忙しかった訳では無いが、
1ヶ月ぶりにあの金木犀に会いに行く。
道中町の並木の金木犀がチラホラ咲いていた。
あの人ももう、咲いているのだろうか。
目を閉じると美しく咲き始めたあの人が見えた。
祖父の家の門を開け、
久しぶりと、声を掛けに行こうとすると、
祖父に声を掛けられた。
どうやら宅急便から送られてきた荷物が
重くて運べなかったらしい。
あの人に声を掛けるのを留まり、
素直に祖父の呼び掛けに応じた。
チラリとしか見れなかったが、
微かにあの人にも花が咲いていた。
____キキキーー、ドォーーーーーン。
朝、その衝撃音で目を覚ました。
昨日は何だかんだあり、
あの人に会いに行くことは無かった。
元々三連休を活用した泊まりの予定だったので、
会えないことに焦りはなく、
祖父の頼みをあれよこれよと聞いている内に
行くタイミングを逃してしまった。
祖父が外で何か言っている。
大雨の音でよく聞こえない。
_______嫌な予感がした、
慌てて寝巻きのまま玄関を開けた。
あぁ、あぁ、、、。
居眠り運転の車が塀にぶつかってきたのだと言う。
丁度あの人が立っている塀に。
ショックでその後しばらくの記憶はない。
でもハッキリ覚えている、
折れてしまったあの人と、あの人の強い香り。
それからというもの、
私はまったく祖父の家に行かなくなった。
あの人の亡骸を見たくなかったからだ。
あの人が、あの人が、、、
金木犀の香りが漂う度、
帰ってこないあの人を思い出す。
お題:大事にしたい / No.1
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沢山あったはずなんだけれど、、、。
以前誰かにも聞かれた、
私の大事にしたいもの。
今、虚無に心を支配されている私。
それよりも強く私を支えてくれる太陽、
私のパートナー。
あなたがいればそれでいい、
あとは何もいらない。
、、、ほんとうに?
私は私を守るために、
よく私の"核"を隠してしまう。
"核"はきっと、私にとって何より大事なもの。
_______今は、いったい何から守っているの?