薙左 侑空

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お題:秋恋 / No.2
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毎年祖父の家では、金木犀の花が咲く。
亡き祖母の形見で、
私が生まれた日、祖父の家に植えられた。

何処の金木犀より一際美しく、大きい。





_______小さい頃からの、私の想い人。





特に忙しかった訳では無いが、
1ヶ月ぶりにあの金木犀に会いに行く。

道中町の並木の金木犀がチラホラ咲いていた。
あの人ももう、咲いているのだろうか。
目を閉じると美しく咲き始めたあの人が見えた。

祖父の家の門を開け、
久しぶりと、声を掛けに行こうとすると、
祖父に声を掛けられた。
どうやら宅急便から送られてきた荷物が
重くて運べなかったらしい。

あの人に声を掛けるのを留まり、
素直に祖父の呼び掛けに応じた。
チラリとしか見れなかったが、
微かにあの人にも花が咲いていた。


____キキキーー、ドォーーーーーン。

朝、その衝撃音で目を覚ました。
昨日は何だかんだあり、
あの人に会いに行くことは無かった。
元々三連休を活用した泊まりの予定だったので、
会えないことに焦りはなく、
祖父の頼みをあれよこれよと聞いている内に
行くタイミングを逃してしまった。

祖父が外で何か言っている。
大雨の音でよく聞こえない。

_______嫌な予感がした、

慌てて寝巻きのまま玄関を開けた。



あぁ、あぁ、、、。
居眠り運転の車が塀にぶつかってきたのだと言う。
丁度あの人が立っている塀に。

ショックでその後しばらくの記憶はない。

でもハッキリ覚えている、
折れてしまったあの人と、あの人の強い香り。



それからというもの、
私はまったく祖父の家に行かなくなった。
あの人の亡骸を見たくなかったからだ。



あの人が、あの人が、、、










金木犀の香りが漂う度、
帰ってこないあの人を思い出す。

9/22/2024, 1:50:17 AM