「絶対たこ焼きがいい」
「焼きそばのほうがいいに決まってる」
私のクラスは文化祭でやる屋台を何にするか議論している。私はたこ焼きグループの後ろの方でいがみ合いを見ていた。
しかし両者譲らず議論が開始してから1時間以上が経った。誰もが怠くなり帰りたいムードが漂う。その証拠にリーダー格、2、3人以外はほとんど椅子に座り雑談している。顔を伏せて寝る人までいた。
あれを使うしかない。
そう思い、私は目立つ場所まで歩き、そして涙を目に溜めた。準備は満タン。私はうぅ、うぅとうめいて見せた。喚いていたリーダーたち含め全員が私に注目する。私はここぞとばかりに目を瞑り、溜めていた涙を流した。
「どうしたの真壁さん?」
近くにいる男子が心配そうに席を立った。
「こんなの嫌。私みんなの険悪な姿なんか見たくない」
私は手の甲で涙を拭きながら叫んだ。
周りがざわめき出す。近くにいる人たちが私に近づき「ごめん」とか「大丈夫」とか次々に慰めの言葉を発する。
いつも愛されてキャラの私はこうやって生きてきた。
きっかけは幼い時、母とおもちゃ屋さんに行っていた。しかし母は買ってくれなかった。駄々をこねても、何をしても。帰る時、私と同じぐらいの歳の男の子が泣き叫んでるを見た。その子に「はいはい、買ってあげますから」と母親らしき人が言ってるのを見て私は確信した。泣いてしまえば、なんでも許してくれるのだと。
それは学生になっても変わらず、涙さえ見せれば、怖いと定番の先生にだって効果抜群。
私はまた感情のない涙を流す。
言葉だけではわからない
だから難しい
こんなに君のことを想っているのに
いつもそうやって嘘をつく
仮面を身につけて本当のことは言わない
そういう生き物
誰よりも繊細な君は今でも僕のことを気にしているのだろう
考えすぎると良くないと言ってるのに
頑固で泣き虫で傷つきやすいのに
誰だって自分を見失ってる
でも僕だってわからない
だからそっとしておこう
私は毎日ひとつ、いつもとは違うことをするようにしている。
ほんの小さいこと。
歯ブラシを逆手で磨いたり、興味のない本を読んでみたり。
私は今日ある挑戦をしようとしている。
それはおやつに回転寿司で寿司一貫だけ食うという奇行だ。
回転寿司の強みは何より安いことだ。
100円程度で普通の寿司なら2貫食える。
100円の中で食べれるどの菓子パンやクッキーより寿司が一番高級なのだ。
いつもなら遠慮してあまり食べない大トロもお菓子感覚で一貫食べるだけならなんの罪悪感もない。
なんならおいつもは菓子を食べてるところで寿司を食べてるのだからお得だろう。
おやつで大トロを食べれる、いや、おやつでしか大トロは食べられない。
私はまた新しい未到の地へ一歩踏み出してしまった。
あの夢の続きを
起きた時、ぼやけている頭に映像が残っている。
友達や家族、思い出の場所、出来事、それぞれが混ざり合う
セリフは覚えているほいが少ない
どんな時も夜が来る
目を瞑るとそこには僕の映画が広がる
雪降る街を歩く
繋いだ手の温もりが体全体に広がる
歩くたびにつく足跡も明日には消えてるだろう
街を照らす街灯は私たちを祝福しているようだ
彼の瞳には何が映っているのだろう
私はもう君しか見えないのに
彼の発する言葉は雪より冷たい
もうとっくに火は消えていたのかもしれない