「絶対たこ焼きがいい」
「焼きそばのほうがいいに決まってる」
私のクラスは文化祭でやる屋台を何にするか議論している。私はたこ焼きグループの後ろの方でいがみ合いを見ていた。
しかし両者譲らず議論が開始してから1時間以上が経った。誰もが怠くなり帰りたいムードが漂う。その証拠にリーダー格、2、3人以外はほとんど椅子に座り雑談している。顔を伏せて寝る人までいた。
あれを使うしかない。
そう思い、私は目立つ場所まで歩き、そして涙を目に溜めた。準備は満タン。私はうぅ、うぅとうめいて見せた。喚いていたリーダーたち含め全員が私に注目する。私はここぞとばかりに目を瞑り、溜めていた涙を流した。
「どうしたの真壁さん?」
近くにいる男子が心配そうに席を立った。
「こんなの嫌。私みんなの険悪な姿なんか見たくない」
私は手の甲で涙を拭きながら叫んだ。
周りがざわめき出す。近くにいる人たちが私に近づき「ごめん」とか「大丈夫」とか次々に慰めの言葉を発する。
いつも愛されてキャラの私はこうやって生きてきた。
きっかけは幼い時、母とおもちゃ屋さんに行っていた。しかし母は買ってくれなかった。駄々をこねても、何をしても。帰る時、私と同じぐらいの歳の男の子が泣き叫んでるを見た。その子に「はいはい、買ってあげますから」と母親らしき人が言ってるのを見て私は確信した。泣いてしまえば、なんでも許してくれるのだと。
それは学生になっても変わらず、涙さえ見せれば、怖いと定番の先生にだって効果抜群。
私はまた感情のない涙を流す。
1/16/2025, 2:36:22 PM