鳥のように
私は牛。食用の牛。
ステーキ、牛丼、ハンバーグ。みんな好きでしょう?私らからできているんだ。
チーズ、ヨーグルト、クリーム。これ、私らの乳からできているんだよ。
でも、勝てない。
僕は豚。食用の豚。
生姜焼き、酢豚、豚カツ。みんな好きでしょう?
僕らからできているんだ。
でも、勝てない。
ああ、鳥には唐揚げ、フライドチキンがあるのにな。
ああ、鳥にはスクランブルエッグ、目玉焼き、卵焼きの材料の卵があるのにな。
私には卵なんて産まれない。有名な揚げのレシピもない。卵の汎用性に乳は負けてる。なんて要らないんだろう。
僕には乳も卵もなんにも出せない。肉だけ。なんて要らないんだろう。
鳥のように、いいものがあったらな。鳥のように、なりたいな。
妾は鳥。食用の鶏。
唐揚げ、フライドチキン。好きであろう?
妾らで出来ておるのだ。
スクランブルエッグ、目玉焼き、卵焼き。
パン、お好み焼き、チャーハン。
これ、妾らの卵からできておる。
でも、勝てないな。
アレルギーなどで気をつけている人を除いて、パッと後半は浮かばぬ。揚げものばかりが目立っている。こんな妾が牛さんや豚くんと並べられても良いものか。
、、、だが、妾がいなければ困る奴もおるはず。
羨ましく思う時もあるが、仕方がない。妾にできることと、みんなでできることを合わせて、最高の食事を届けたいと思う。
牛さん、豚くん、頑張ろうな!
鳥のように、鳥のように、なりたいな。
鳥のように、鳥のように、鳥のように、、、。
さようならを言う前に
もう、こことは別れなければならない。悲しいが、俺も大人になったということだ。みんなでこっそりと侵入した森の奥の秘密基地。川の音と鳥の鳴き声が微かに聞こえる。ごごご。おたまじゃくしのたまちゃん、立派なカエルになったのかな。いつのまにか水槽から消えていたけど。ほーほほっほほー。この鳴き声から、フクロウが居るんだと思い込み、森のあちこち探し回ったな。朝にフクロウが居るわけないのに。
あ、この湖、、。確か俺、溺れかけたんだっけw香穂ちゃん、元気かな。またアホみたいなことやって、みんなに迷惑をかけてんのかなーwなんてね。
香穂ちゃん。俺の、、なんつーか、、。親友だった子。アホで、バカで、間抜けで、みんなをハラハラさせるようなことばっかりしてた。顔はまあまあ可愛かった。だけど、死んじゃった。13歳で。
一緒に木に登って、一緒に川に潜って、一緒に飯食って、一緒に秘密基地作って、一緒に、、。一緒に、、、、。これ以上考えてもしかたない。
「さようなら。俺の思い出の場所。」
そう声を出そうとした瞬間、温かい風が背中を抜けた。ハッと振り返る。なぜか、懐かしい感じがした。そしてそこに何か埋まっている。
俺は、これを掘らなきゃと思った。手で土をかき分けると、それはお菓子の缶をガチガチにガムテープで止めたもの。そしてインクが剥がれかけて読みづらいが、マジックで「タイムカフセル!間けないでね!」
誤字がある。香穂ちゃんと俺の文字だった。
中を見てみる。中には懐かしいおもちゃ。てんとう虫形で飛ぶやつ、ヨーヨー、シール。下の方に2枚の手紙があることに気がついた。
「未来の俺へ
元気?今何やってる?ポケモンは全種類そろえれた?オレのことだからきっとできているでしょう。」
ごめん、できてない。
「俺はなんか、変な生き物つかまえたり、してます
13のオレより。」
文章がなさすぎるだろ。なんでこんなもん埋めたんだ。
もう一枚を読んでみる。
「未来の香穂へ
未来の香穂は今何さいですか。誰と血痕しましたか。」
怖。
「って、、血痕相手はゆうたくんですよね?」
ッ!俺?
「私、ゆうたくんに好きって言います。14才のたんじょうびで。絶対成功しますよね?いや成功させて見せます!13の香穂より。」
あぁ、、。
なら、俺も伝えなきゃ。
「好きだったよ。
さようなら。香穂ちゃん。」