りん

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さようならを言う前に

もう、こことは別れなければならない。悲しいが、俺も大人になったということだ。みんなでこっそりと侵入した森の奥の秘密基地。川の音と鳥の鳴き声が微かに聞こえる。ごごご。おたまじゃくしのたまちゃん、立派なカエルになったのかな。いつのまにか水槽から消えていたけど。ほーほほっほほー。この鳴き声から、フクロウが居るんだと思い込み、森のあちこち探し回ったな。朝にフクロウが居るわけないのに。
あ、この湖、、。確か俺、溺れかけたんだっけw香穂ちゃん、元気かな。またアホみたいなことやって、みんなに迷惑をかけてんのかなーwなんてね。

香穂ちゃん。俺の、、なんつーか、、。親友だった子。アホで、バカで、間抜けで、みんなをハラハラさせるようなことばっかりしてた。顔はまあまあ可愛かった。だけど、死んじゃった。13歳で。
一緒に木に登って、一緒に川に潜って、一緒に飯食って、一緒に秘密基地作って、一緒に、、。一緒に、、、、。これ以上考えてもしかたない。

「さようなら。俺の思い出の場所。」

そう声を出そうとした瞬間、温かい風が背中を抜けた。ハッと振り返る。なぜか、懐かしい感じがした。そしてそこに何か埋まっている。
俺は、これを掘らなきゃと思った。手で土をかき分けると、それはお菓子の缶をガチガチにガムテープで止めたもの。そしてインクが剥がれかけて読みづらいが、マジックで「タイムカフセル!間けないでね!」
誤字がある。香穂ちゃんと俺の文字だった。

中を見てみる。中には懐かしいおもちゃ。てんとう虫形で飛ぶやつ、ヨーヨー、シール。下の方に2枚の手紙があることに気がついた。

「未来の俺へ
元気?今何やってる?ポケモンは全種類そろえれた?オレのことだからきっとできているでしょう。」
ごめん、できてない。
「俺はなんか、変な生き物つかまえたり、してます
13のオレより。」
文章がなさすぎるだろ。なんでこんなもん埋めたんだ。
もう一枚を読んでみる。

「未来の香穂へ
未来の香穂は今何さいですか。誰と血痕しましたか。」
怖。
「って、、血痕相手はゆうたくんですよね?」
ッ!俺?
「私、ゆうたくんに好きって言います。14才のたんじょうびで。絶対成功しますよね?いや成功させて見せます!13の香穂より。」
あぁ、、。

なら、俺も伝えなきゃ。
「好きだったよ。

さようなら。香穂ちゃん。」

8/20/2024, 3:10:30 PM