「貝殻」
海岸で拾う貝殻
手のひらで転がして
殻の中から聴こえる
聲を聴く
耳に押し当てて
消え入りそうな囁きを
それは
哀しみの海へと辿り着いた
涙と共に
誰かの捨て去ろうとした
想いだった
誰にも拾ってもらえなかった
聲だった
聲はちゃんと届いたよ
聲をちゃんと掬ったよ
だからもう………
嘆く必要はないのだよ
手のひらの貝殻
透明になって消えていく
想いが昇華し虹となる
誰かがきっとそれを見て
前へ向くだろう
貝殻の精は今日もまた
哀しみの海へと辿りついた
貝殻を拾ってゆく
自分自身の失われた
拾ってもらえなかった聲を探して
「些細なことでも」
すぐに気がついちゃうんだ
君の変化に
どんなに些細な事でも
それは私がどれほど
君を見ているか
君に心を寄せていたか
なんだけど
そんなの君は知る由もないよね
私は君の
些細な変化に気づいてた
君は私の
些細な変化に気づけなかった
とても
とても
些細なことだけど
すれ違うには充分な理由だった
「心の灯火」
私が倒れないように
後ろから支えてくれるのは
安寧の月
私の闇を知りつつも
理解しようと受け止めてくれるのも
安寧の月
受け止めて 支えて
そっと
後ろから背中を押してくれる
私の心の灯火は安寧の月
その安寧の月も
実は孤独で
自らも背中に闇を纏っていた
それを誰にも見せないように
気丈にも仄かに輝き
人々に安らぎを与えるかのように
あぁ だから貴方は
安寧の月のような人なのだと感じたのだ
あぁ だから貴方にも
心の灯火が必要なのだとそう感じたのだ
だから
私も貴方の心の灯火になりたいと
そう想ったのだ
燦燦とギラつく太陽でなくていい
冬の寒さをほんのりと暖かくする
ぼやけた輪郭の太陽でいい
そう想ったのだ
貴方の背中に纏う闇を
少しでも……減らせるようにと
「開けないLINE」
君からのLINEがきてるのは知ってる
それでも無視してしまう
開けてしまえばきっと
甘えてしまうから
負担になってしまうのが怖くて
きっと君は気にしなくてもいいって
言うだろうけど
なんか変なプライドと格闘してる
こんな馬鹿みたいな理由で
開けないLINE
こんな馬鹿な私をどうか許さないで
「不完全な僕」
何かが欠けてる
その何かが分からずに
この地を彷徨う
その不完全さ故に脆く
その不完全さ故に強く
精一杯
息して生きて意気て
不完全な僕を抱きしめている
多分
みんなそうだろう
不完全さ故に
僕が成りたっている
そんなもんだろ
不完全な僕と
不完全な君と
そんな僕たちで
世界は回っている