「凍える指先」
真冬の水道水は冷たい。冷たいを通り越して痛みを感じる指を流水につけて、今日の生活の後始末をしている。
温まるのを待てば良いだけだったんだけど。
洗っている間に温まるだろうと思っていた。早くやるほど水の節約でさらに時短だから、私はそれを優先した。身にしみて思う、ケチは自分の身を滅ぼすと。
そうして残り三皿を切ったところで、ようやくぬるく温まりだしたのに、黒い感情が湧き上がった。
ケチは、メンタルにも良くない。
「霜降る朝」
凍りつきそうなほど寒い日の朝、世界を恨みながらドアを開ける。
ああ、凍ってしまう。私の血行の良くない手足の先がすでに温度を失いつつある。これはしもやけコースだろうな。
そもそも私起きたくなかった。人間だって動物だし、好きな時間に起きたってよくないですか? 目覚ましとか出勤時間のためにわざわざ睡眠を切るなんて馬鹿らしい。布団からも出たくなかった。何故快適な場所から自ら這い出て辛い環境に行かなければいけない?
なんて不毛なことを思いながら電車に乗る。そんな今日という一日の始まり。
「心の深呼吸」
深海ではそもそも呼吸ができないので、そこで落ち着けるわけもなく。まずは酸素のある場所を目指すこと。
話はそれから。
心に呼吸をさせたいと思うなら、身体の方にも気を遣ってあげるべき。
「時を繋ぐ糸」
糸電話の先に昔の自分がいて、一方的にでも話せるとしたら、人生をしくじらないために伝えたいことが山ほどある。
「記憶のランタン」
怒りはよく炎に例えられますね。
つまりそう、ここは君が過去に怒りを覚えた記憶の集積場です!
このランタン一つ一つが怒りの感情です。こうやって、燃え広がることも消えることもないように管理しているのです。
びっくりした?
思ったより綺麗で?
それは、まあ、当たり前ですが炎って危ないですからね。すぐ燃え移るし、触ると火傷するし、そのままでは管理できないのでこうしてランタンに加工しています。綺麗と言っていただけて光栄です。頑張った甲斐がありましたね。
さて、君にはこの中からひとつランタンを持ち帰っていただきましょう。好きなものを選んでも構いませんが、よろしければ管理人である私が一番適切なものをお選びいたしますよ。
なぜわざわざ怒りを持ち帰るのかって?
今の君に必要だからです。炎はエネルギーですから、怒りの記憶は活動するための原動力になり得るのです。
ではこちらがよろしいですかね。どうぞお持ちください。丁寧に扱う必要はありますが、普通に持つ分には危なくないので恐れずに。
暗い場所明かりがあると落ち着くでしょう。
道は見えましたか?
それではお気をつけて。