祈りの果て
たとえ、女神の理を超えようとも、対価に俺の全てを奪われようとも、どうしても叶えたい。本人がどれだけ満足していても、惜しいと思わなくても、俺はお前に生きて欲しい。それがどれだけ我儘で、強欲な願いだとしても、きっと叶えて見せる、これは俺だけの決意なのだ。
そうしたら、何もかも一緒に背負って共に生きよう、クロウ。
寂しくて
クロウはジュライの事件が終わった後、やりたい事が定まったようで忙しくしている、腰を下ろす土地も決めたそうだ。それを寂しく思ってしまう。
頭では分かっている、生き返った後どこか途方に暮れていたクロウを見ていたから、喜ばしい事だと。
遠い場所に行くからだろうか、今までより顔を合わせる事が少なくなるかもしれないからだろうか、連絡手段は沢山あるのに。
本当は分かっている、自分が知らないクロウになってしまうのが嫌なのだ、寂しくて、嫉妬している、自分の気持ちを伝えられない臆病者の癖に。
行かないでと、願ったのに
50ミラの利子で繋ぎ止めたのは、単純に寂しいと思ったからだ。これからも仲間として過ごしていくのに不思議だと自分でも感じていたが、あんな事が起こってしまった。
別れ方には納得できなかった、お前はずっと抱えていたのだろうが、一方的に理由も言わずに始められたこっちの身にもなって欲しい。お前に追いついて絶対一発殴ってやると思っていたのに、理由を聞いて頭まで撫でられてしまったら、そんな気はなくなってしまった。
だってずっと好きだったんだ。あの時、俺を恐れず、黙ってくれたのがどれほど救われたのか分かってないのだろう。
だから決めた、どんなに無理だと言われようと、お前を連れ戻してやると。そして、どれほど拒絶されようと想いを告げると。
なのに、どうして血が止まらないんだ、支えてる体が重くなっていくんだ。
ああ、ずっと、行かないでと、願ったのに
秘密の標本
秘密にしている事がある、誰にも言っていないが察してる人は、まあ、いるのだろうけど、一番知られたくない人にはバレてはいないはずだ。
あの時の服を未だに持っている。洗う事もせず、黒ずんでとても服とは言えない状態だが、あいつが最後に残したモノだと思うと捨てられずにいるのだ。
あいつが死んですぐにはあの服は見れなかったが、少し経った頃、現実を見るために取り出した。でもすぐに大事な思い出の服になってしまった。
前に進めと頭を撫でてくれた、敵対してる癖に俺を甘やかすあの顔、トールズで過ごした日々を鮮明に思い出せる。忘れる事なんてないのにあの服に付いたモノに縋っていた。
あいつが紆余曲折あって生き返ってきてくれた後も、やはり手放さずに持っている。あいつは匂いにも敏感だし、隠すのが大変になったが、処分することは考えていない。あれは、あの時の大事なだいじなモノだから、縋る必要がなくなった今でも俺の大切な宝モノなのだから。
どこまでも
お前と一緒なら、たとえ「外」だろうと大丈夫なんだろう。