蛙のユウ

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秘密の標本
 秘密にしている事がある、誰にも言っていないが察してる人は、まあ、いるのだろうけど、一番知られたくない人にはバレてはいないはずだ。
 あの時の服を未だに持っている。洗う事もせず、黒ずんでとても服とは言えない状態だが、あいつが最後に残したモノだと思うと捨てられずにいるのだ。
 あいつが死んですぐにはあの服は見れなかったが、少し経った頃、現実を見るために取り出した。でもすぐに大事な思い出の服になってしまった。
 前に進めと頭を撫でてくれた、敵対してる癖に俺を甘やかすあの顔、トールズで過ごした日々を鮮明に思い出せる。忘れる事なんてないのにあの服に付いたモノに縋っていた。
 あいつが紆余曲折あって生き返ってきてくれた後も、やはり手放さずに持っている。あいつは匂いにも敏感だし、隠すのが大変になったが、処分することは考えていない。あれは、あの時の大事なだいじなモノだから、縋る必要がなくなった今でも俺の大切な宝モノなのだから。

11/2/2025, 11:27:20 AM