「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
走っても走っても、周りは森だらけ。
…なんで、なんでここから抜け出せないんだ…っ!
…だれか、助けて…!
そう思った瞬間、脳に声が響いた。
「あなたは誰…?」
…あれ、…俺は、…何から逃げて…っ!
ーあーあ、気づかれちゃった。
「…いただきます」
タイトル「貘」
「輝きの“強さ”」
私の子供は自堕落な生活をしている。
寝転がって、ただスマホを見てる。
…でもね、
スマホの奥には、すごく素敵な人がいるんだよって、言うだけ。
ただ子供は、なぜそんなにまっすぐ見れるのかなって思う。
その輝きを。
人のためになることをして、人生なすべきことをして、そうして生きている彼らを、どうまっすぐ見ればいいの?
子供はまだ知らない。
…きっといつか、知る時が来るはずだよ。
…君のお父さんのように、…輝きに飲まれてしまった人間たちのお話を。
「蛇」
目を見て。
まっすぐ。
ただ目を見て。
そうして生きてきた。そうすれば逃れられたのに。
…今だけは、どうしても目を合わせられない。
…でも目をあわせなきゃ、…あなたに伝えられない。
…だから、…ごめんなさい。
…ああ、今だけ、時が止まってくれたなら、…貴方を、“石”にしなくて済むのに。
「“ななかまど”と“またあした”」
七竈の花が咲いている。
毒々しく咲いてる。
じっと、ずっしりと。
呆然とするしかなかった。
ただ、ただただ何も動かないことは確かで。
まっすぐ遠くを見つめてる。
ただ静かに見つめてる。
すぐに声が響く。
集まる声、音、声。
ただ見つめる。
見つめるだけ。
いつもの足も、頭も、手も、体も、ただ動かないまま。
呆然と見つめる。
「…なんでっ、…!」
君の声がする。
いつもの心臓も、ただ動かないまま。
まっすぐ目を見ること、って難しい。
目を見ることは、心を通わせること。
だからこそ、こわい。
心を通わせれば、見せるのはあなただけじゃない。
あなたの心まで見えてしまう。
見たくないものも見てしまう。
それでも心を通わせて、心を通じ合わせれば、
見えてくる、あなたの全てが。
全部見えて、それでも足りないくらい、
ずっと一緒に痛くて、大好きで。
あなたに出会えたことこそ、至高の幸せだと思えるようになる。
そんな人は滅多にいない。みんな嫌なところばかり見える。
でも、あなたは違う。
どれだけ探しても、どんなに欲しくても、きっと見つからない。
あなたに出会えたことが奇跡。
だから…