冷凍庫にしまってあるシーフードミックスと冷蔵庫に眠っているブラウンマッシュルームをふんだんに使い、アヒージョを作るのだと午後の会議中に思い立ち、帰宅の途に就いている。
お口の中は地中海の香りに満ち満ちている。
やはりワインだろうか…否、明日は金曜日、仕事だ。
飲みきるには危うすぎる。ここは冷蔵庫に横たわるハートランドおビールを選択すべきであろう。
ニンニク臭も気になるが、知ったことでは無い!
ふふふはははははっ!
リビングの扉を開けると、地中海の香りを漂わせたカレーを頬張りながら、頬っぺを桃色に染めた夢喰いのバク二頭が楽しげに黄金麦汁を飲み干していた。
——— ひそかな想い ———
当たり障りのない会話の中にヒントとなりうるキーワードを機雷みたく散りばめて、必死に正体を探っている。
ほんま誰なんやろう…この人。
シャットアウトするのは花粉だけにしてもらえませんかね?
未だにあなたを崇め奉る人達が多過ぎて困っています。
マスクさん。
——— あなたは誰 ———
助けてください。
電脳世界に住まう僕らは一日千秋の想いなど全くの無縁で、瞬時に届くどこか希薄な文字の羅列に日々追いかけ回されています。
何方か、僕らの愛した手紙の行方を知りませんか?
誤字脱字さえも愛おしいあの頃に戻りたいのですが…
——— 手紙の行方 ———
あたしは小学生の頃から塾に通い、中学受験、高校受験、大学受験の全てにKO勝利してきたKO率100%の女。
だが…実社会(飲み会)ではどうだ。
あたしがコツコツと積み上げてきたモノが一切通じない。
「あげ〜⤴︎︎⤴︎︎✨」と天を指差し叫ぶ女の独壇場だ。
恐ろしい世界だ。
彼女の繰り出す意味不明の言霊達に皆が狂喜乱舞している。
これが…GAL…
負けられない!
あたしはKO率100%の女!
この世界でも負けてなんかいられないんだから!!!
「で、ボコボコにされてきたって話でOK?」
「そう…初めてKO負けした。パパも経験ある?」
「ある。あいつらポジティブの塊だもんな…無敵だよな」
「うん…眩しかった」
「世界は広いよな」
「うん」
——— 輝き ———
敢えて止まれと命令しなくても、結果的に我々は止まった世界を
堪能することとなる。良くも悪くも。思い出として。
だから妄想世界にサヨナラをして、今を楽しく生きてこ!
——— 時間よ止まれ ———