『この道の先に』
家出をした。
両親から入学祝いに買って貰ったスーツケースに最低限の荷物をつめて、履きなれたローファーを履いて深夜2時、家を出た。
私の両親はとても優秀で父は教授、母は銀行員だ。だからなのか、成績にとても厳しい。
学年3位以内に入らないと長時間説教をされる。
学年3位以内に入らないと約立たずだと罵られる。
学年3位以内に入らないともっと努力しろと怒鳴られる。
でも。
学年3位以内に入ると当たり前だと言われる。
学年3位以内に入るとやっと役に立ったなと言われる。
学年3位以内に入るとお前の価値はこれだけだと言われる。
そんな暮らしはとてもつらかった。
家を出よう。
ある日ふとそう思った。いや、何回も思ったことがあるけれど、ここまで強く思ったのは初めてだった。
多分、限界が来ていたのだと思う。
だから私はみんなが寝静まった深夜2時、家を出た。
外は真っ暗で道の先もよく見えない。
歩き慣れた道だけど、何かが吹っ切れたからなのか、何処か違う気がした。
この道の先に何が待っているかはわからない。
だけど、縛られる人生はもう飽きた。
私の人生は、私の道は、誰かに縛られていいものじゃない。
強くそう思った。
「よし、行こっ」
私はそう呟いて歩き出した。
『何もいらない』
⚠閲覧注意⚠
( 鬱、病み etc )
「あの方、心を病んでしまったそうよ」
「お仕事にも行けずに引きこもっているそうね……」
「あの2人、とても仲の良い夫婦でしたものね」
「えぇ。 可哀想に……」
みんなは僕を可哀想だと言う。
ご近所さんや友人、家族。様々な人が、そう口にする。
僕にはその意味が理解出来ない。
だって、僕には優しくて可愛い妻がいるから。
妻がいるから、毎日毎日笑顔でいられる。
妻がいるから、毎日が幸せで溢れている。
妻がいるから、どんなに苦しくても頑張れる。
こんなに幸せなのだから、可哀想なわけがない。
妻がいれば他に何もいらない。美しい光を放つダイアモンドも、高級な布を使った洋服も、何もいらない。
僕は妻がいるならそれでいい。
妻だけが僕の生き甲斐だから。
#生き地獄か天国か_④
──── END ────
『無色の世界』
君がいなくなってから何週間が、何ヶ月が経っただろうか。
君がいた世界はとても華やかで輝いていたのに。
今は真っ暗で、何も見えないんだ。
笑い方や、楽しいという感情、喜びを忘れてしまったんだ。
朝起きて、何も食べずに仕事に行く。
夜遅くまで働いて家に帰る。
酒を飲んで、つまみを食べて、死んだように眠る。
そんな毎日なんだ。
君がいた時は、笑顔が絶えることなんてなかったのに。
君がいた時は、毎日が幸せだったのに。
君がいた時は、どんなに苦しくても挫けることはなかったのに。
君は、いつ、帰ってきてくれますか。
#生き地獄か天国か_③
『ここではない、どこかで』
ずっと一緒にいると約束したのに。
君は僕を置いて、どこに行ってしまったのだろう。
君に会うには、どうしたら良いのだろう。
もっともっと真面目に働けば良いのだろうか。
困っている人を助ければ良いのだろうか。
神に祈れば良いのだろうか。
時が経つのを待てば良いのだろうか。
”天国”とかいう名の、ここではないどこかに、行けば良いのだろうか。
何度考えても分からない。
分かるのは、涙があふれてとまらないということだけだった。
#生き地獄か天国か_②
『届かぬ想い』
「ずっと一緒にいよう」
そう言ってくれた時は嬉しかったなぁ。
世界で一番嬉しかった。
私にはこの人が必要なんだ、って改めて感じたの。
この人と幸せになりたい、って。
それから毎日が幸せで、笑顔が耐えることは無かったの。
朝起きて隣にあなたがいて。
朝ご飯を一緒に食べて。
つらいお仕事も頑張ろう、って思えて。
お仕事から帰ってきたらあなたが迎えてくれて。
夜ご飯を一緒に食べて。
一緒に眠りにつく。
とっても幸せだったの。
だから、こんな事になるとは思ってもいなかったの。
ごめんね。
本当にごめんね。
あなたを置いていって、ごめんなさい。
#生き地獄か天国か_①