『この道の先に』
家出をした。
両親から入学祝いに買って貰ったスーツケースに最低限の荷物をつめて、履きなれたローファーを履いて深夜2時、家を出た。
私の両親はとても優秀で父は教授、母は銀行員だ。だからなのか、成績にとても厳しい。
学年3位以内に入らないと長時間説教をされる。
学年3位以内に入らないと約立たずだと罵られる。
学年3位以内に入らないともっと努力しろと怒鳴られる。
でも。
学年3位以内に入ると当たり前だと言われる。
学年3位以内に入るとやっと役に立ったなと言われる。
学年3位以内に入るとお前の価値はこれだけだと言われる。
そんな暮らしはとてもつらかった。
家を出よう。
ある日ふとそう思った。いや、何回も思ったことがあるけれど、ここまで強く思ったのは初めてだった。
多分、限界が来ていたのだと思う。
だから私はみんなが寝静まった深夜2時、家を出た。
外は真っ暗で道の先もよく見えない。
歩き慣れた道だけど、何かが吹っ切れたからなのか、何処か違う気がした。
この道の先に何が待っているかはわからない。
だけど、縛られる人生はもう飽きた。
私の人生は、私の道は、誰かに縛られていいものじゃない。
強くそう思った。
「よし、行こっ」
私はそう呟いて歩き出した。
7/3/2023, 2:16:53 PM