ー巡り会えたらー
ある占い師は私に
「今年は運命の人に出会えるでしょう」
と言った。
私は何でも信じやすい性格で
運命の人と聞いてとても喜んだ。
そこからは
毎日この人かな‥いや、この人かも…
など考えながら過ごしていた。
だけど、運命の相手と巡り会った!!
なんてことはなかった。
その時の私は分かってなかった。
運命だけに任せていては
運命の出会いなどないことを。
運命の人じゃなくて
運命を変えてしまう人に
出会ってしまったと。
ーたそがれー
満潮になった
海を眺めるけれど、
僕の影は映らない。
波が迫ってきては
遠のいていくけれど
僕のことは
濡らさない。
オレンジ色の波は
あの日の黒い波を
隠すように
暖かい面を見せるけれど
中は深く、冷たくて、とても。
僕と一緒だね、なんて
呟きながら、
黄昏時にここにいた頃の
自分に赤い涙を流すんだ
ー静寂に包まれた部屋ー
「あはははっ、おいマジかよ」
「おーーいここここ!」
「よっしゃあ、」
「強すぎるだろ」
「あーーっ」
「ヤバいヤバい」
何をしているのだろう。
窓を開けたらそこにある。
同級生が
何のためでもなく
ただ騒いでいる。
私はただ四方壁に囲まれた
人につくられた部屋に籠って
人に書かれた本を読んで
ショウライのためにと
人に教えられたことを学ぶ。
何も誰も
自ら動こうとしない
静寂の部屋で
私を動かしてくれる
誰かを待っていては
部屋の壁より
私の心の壁が高くなって
自分が出ることも
誰かが入ることも
出来なくなるのだろう。
「ここ前に来た時はライトアップされてたよな」
ー前に、来た、?ー
私が首をかしげる。
すると、君はわざとらしく
「あぁ、似たとこだったかな」と言った。
違う。私と夜に外に出かけたことなんかない。
「行ったことないと思うけど?」
「デジャヴかな」そう言って口角をあげる君。
目が笑っていない。
あぁ、この顔…
見たことある。デジャヴなんかじゃない。
「そっか、嘘つき。」
今更「好きだ」なんて
デジャヴはやめてね、
全部元から無かったんでしょう
ー秋ー
秋の桜の
寂しさの風に
かんたんに左右されない
細い茎と花びらに
君と私の儚さを咲かせて
お花見をしようか
寂しさの空に
春の桜の花びらのように
舞い、散り、嘆き、
大きく見せることなど
枯れ葉と同じに捨ててしまえ