ー無色の世界ー
私には、
喜怒哀楽の喜と楽が分からない。
いつからか感じないのだ。
誕生日とかに友達にプレゼントをもらった時も
反射的に
「どんな風に反応したらいいのか。」と
考えてしまう。
結局
ありがとうと言いつつも
多分顔が引き攣っていただろう、
わざとらしかっただろう、と
自分でも分かってしまう。
そして、大体
その次の年にはプレゼントをくれなくなるのだ。
悲しみ、とかいうマイナスの感情だけはあるから
泣くことはできる。
でもその涙は
笑顔に変わってくれない。
これじゃ何の意味もない反省だと思う。
私は
「みんなと一緒に楽しむ」ということが
すごく苦手だった。
でも、空気を読むことはできたから
友達とかクラス全体とか部活とかで
集まるよって時はよく行った。
でも、それはみんなの言う「遊びに行く」ためじゃない
ただの「付き合い」。処世術だった。
楽しんでるふりくらいはできるし
友達の言うことに笑うことだってできる。
プレゼントを渡される時とは違って
そこまで反応を期待されていないからだ。
でも、
ホントは楽しくないのだ。
家族はこんな私に
冷たいとか変とか言った。
私は本当に喜楽が無いのか。
これがやりたい、と言ったことを
親はあんたにはどうせできないと言って辞めさせた。
自分がこれが欲しい、と思って買ってきたものを
親はこんなものを買ってとその後もずっと
馬鹿にするようになった。
これが好きだって言ったものを
同級生に馬鹿にされた。
自分自身を
同級生に馬鹿にされた。
多分こういうものの積み重ねで
自分の感情を表すのが怖くなったのだと思う。
こういうことって
繊細な人にはよくあることなんだと思う。
大人になって、
私は
塾の講師をし始めた。
コミュニケーションは苦手だったが
仕事って割り切ると全然苦でも無く、
むしろ楽しかったのだ、楽しかったのだ、
仕事が出来れば良い、
「楽しまなくていい空間。」
この無色の世界が楽しかったのだ。
ー桜散るー
桜が咲く季節は
始まりの時期。
色々な期待をしたりもするが
初めはしんどいことも多い。
桜はその暗い気持ちを照らすように
花びらを揺らしている
今年は桜が散るのが早かった。
でも、
私が
新しい生活に慣れるのも
今年は早かった。
役目を終えたように
一面は新緑に変わる。
私は新緑が本当に好きだ。
植物が生きるために
多くの光を受け止めるのは
桜が散った後だ。
私が生きるために
多くの光を受け止めるのは
不安を乗り越えた今だ。
この素晴らしき日の始まりから
光を、
しっかりと、
どんな高級なプレゼントよりも
大事に包み込んで
そして、いつか、
自分と、他の誰かに、
光を与える花を咲かせよう。
ー夢見る心ー
とても好きな歌手に憧れて
風呂場で歌を歌う。
大っきいステージで歌うなんて妄想をしながらも
カラオケでは恥をかく。
そして安定してない仕事だからとか
誰かから借りた言葉で自分を諦めさせる。
夢には理由なんてないのに
夢を諦める理由だけはやたらと思いつく。
結局今まで通りでさ
変化を怖がってることも
分かってるのに、、
変わりたくて
なんか足りない、足りない、足りない、の繰り返し。
誰かから認められたいと背伸びする自分にも
飽きてさ。
頑張れとか諦めるなの言葉も
響かなくて。
なんか違う、違う、違う、の繰り返し。
ずっと頑張ってきた勉強も「それだけじゃ役に立たない」
どうしてそんなことを
夢を見れたあの時に教えてくれなかったの?
どんな私がいいんですか?
結局、個性なんて言葉など通じない現実
常識、普通、正解?それは一体誰のものなんだ
学歴なんて
儚夢からさほんとは覚めないといけなくて
青春なんて
泡夢からさ覚めているのに気づいてなくて
あぁ、また
頭に浮かんだあの頃の夢と歌を口に出せずに夜任せ
ー言葉にできないー
私は、
好きじゃない人に告白をした。
どうして
周りの人たちは恋愛をしたがるんだろう。
どうして
異性と一緒にいるだけで
周りの人たちは冷やかすのだろう。
ちょっと前まで
みんな友達だったのに、
何かよく知らない感情が、関係が、
私には気持ち悪く思えた。
周りの人が恋愛をしているのを見るのは
フィクションを読むのと同じようなもので
私にとってはどうでも良かった。
何より、
自分が、容姿でいじめられていた私が、
恋愛をするというのがどうも気持ち悪いのだ。
そう思うなら可愛くなれよ、努力しろよ、
せめて性格を良くしろよ、
こういうのが多分周りの人たちの思うところだろう。
そう思ったから、ある時から
化粧もネイルやアクセサリーや髪の毛の手入れとかをやってみた。
人に優しくもした。
ひたすらに思うのは、
誰のために、何のために、頑張っているんだろう。
自分を採点するのは自分を嫌いな自分だけだった。
ある時、
「放課後空いてる?」と聞いてくる男子がいた。
私は、息が止まりそうになった。
嬉しくて、では無い。恐怖だった。
私は人に好かれることなど考えていなかった。
私はその時に
人にああいう感情を向けられたくないと思っていることに気づいた。
そして、また、私はそんな内容だと本気では思ってはいなかった。思いたくなかった。
だから、とりあえず何か用事があったんだろうと自分に言い聞かせて
やんわりと用事があると言って断った。
後悔は全くしていなかった。
私は安心した。
なぜなら私などに告白する者などいないと思ったからだ。
用事だったら、いや確実に用事だ。
だから大丈夫だ。
でも、数日後、また同じ言葉を
彼は言ってきたのだ。
そんな勘違いされるような言葉を
いじめられている人に向かって言う人がいるのか。
そう考えるとこの前よりももっと辛くなった。
もし、仮に、仮に、
どうこうかなると振らないといけないからだ。
え?と思うだろう。
そういう感情を向けられたく無いと思っているなら
潔く振れただろう。と。冷たいけどな。
この答えをここに書くのすら私は辛い。
だから私は最初に嘘をついたのだ。
とは言っても、結局2回目も逃げてしまった。
私はまた用事だと信じることにした。
その後同じようなことを言ってくることは無くなった。
私は安心していつも通りに接することもできた。
あぁ、自分は友達だとちゃんと思ってるんだ、
その時は、そう、思っていた。
ただ、しばらく経って、周りの人たちの様子がどうもおかしいのだ。
もちろん悪い方向でだ。
そう、
その時に初めて後悔した。
また、息が止まりそうになった。
前から私らのことを冷やかしてきたアイツらが
私の本心に気づいていないとはこの時、思えなかった。
もしかしたら、
よく言われる普通の人、私みたいに変じゃ無い人に酷いことをしてしまったのかもしれない。
私は逃げてはいけない、と思った。
そして今更って時に、告白をした。
結果は振られた。
振られた方が嬉しかったはずなのに
私は何とも言えない感情になった。
そう、勘違いしていた自分が惨めで、バカらしくて
最初から放課後の用件を言えよ、とは怒れなかった。
好きな人に好かれたくない人などいるのか。
私はこれに答えられない。
本当は好かれたかったのかもしれない。
自信がなかっただけなのかもしれない。
少数派とかいうものなのかもしれない。
捻くれていただけなのかもしれない。
周りの人たちを怖がっていただけなのかもしれない。
分からない。
でも、恋愛をしたいとは
未だに思えない。
ーないものねだりー
僕は
すごいロボットを買ってもらった。
このロボットは喋り方も見た目も人間そっくりで
今日俺はこいつを新しくできた友達に見せようと、
ロボットの手を勢いよく引いて公園に向かった。
でも、楽しくなかった。
なぜなら友達の話は
彼女ができたとか成績が1位とかサッカーもできるとか…
僕は彼女もいないし成績も体育も含め言えないような感じだから、
ロボットの話をする気なんて失せて
ロボットに知り合いのふりをさせる始末だった。
帰り道には
自分に彼女がいて、天才でスポーツもできて、、
と理想を描いては虚しさに
「ないものねだりだよなぁ」とこぼしてしまった。
「ないものねだりしてるってことは
君は君自身にないものしか見てないってことか。」
急にロボットが喋り出した。
「もったいないなぁ。
もう色々持ってるのに…
誰にだって持ってないものはあるのにさぁ
君もあの子にないものをもってるもんだよ。」
僕は涙を拭うのに必死で
言葉が返せなかった。
しばらくの沈黙の中で
おもむろにロボットがまた口を開いた。
「でもさ、、、
僕は、みんなと一緒だったから
初めから自分にしかないものなんて無かったんだ…」
ロボットは
出ないようにつくられた涙を
拭おうとしていた。