ー冬になったらー
この季節に
僕は
空からやって来た。
今、僕は
イルミネーションに負けないくらい、
街に紛れる子供や恋人達を
笑顔にしてるんだ
でも、
また消えてしまうんだ
明日の夜には。
そんなに寒くないこの都会では。
忘れられてしまうんだ。
どうしてここにいるのか分からないんだ
クリぼっちなんて
人間達は言うらしいが
僕達は、いつも、みんな、一人だ。
人間は
本当の意味でぼっちなんかじゃないだろう
どうしてここにいるのか、
僕に教えてくれるものはないんだ
でも、
あちこちで
意味もなく
笑って、泣いて、寂しいと叫んで、何かを求める
君達を見ていると
僕にも
何か大切な感情が生まれて来る気がするんだ
「生まれ変わったら誰かのそばにいてあげたい」
ーあなたとわたしー
あなたとわたしは
複雑なジグソーパズルのピースの様に
あなたと少しずつ合わさって
段々二人で一つの景色を心の中に形作っていくの
でも、完成はしないの
それでいいの
合わないピースもあるの
ちょっと隙間があるくらいが
ちょうどいいの
ー理想郷ー
人によって理想郷は違うだろう。
それほど苦労せず幸せに暮らすこと、
大きな夢が叶うこと、
みんなが平和に暮らすこと…
理想とは尽きないものだ。
理想は沢山いても
現実とはなかなか仲良くなれず
仲良くなったとしても
それが理想郷に達するということになるか?
仮に、
それが理想郷だとしたら、
そこで浦島太郎は竜宮城についてしまう訳であって、
そこからは
もう老いていくだけってことじゃないか?
そしたら
浦島太郎がいない家族を思う様に
私たちはまた理想を語るんだろう
じゃあ、浦島太郎はどうすべきだったか?
そもそも竜宮城、
理想郷に
辿り着くべきでは無かった?
それはそれで寂しすぎやしないかい?
私がここで大事だと思うのは、
理想についてよく知ることだと思う。
竜宮城という理想郷をよく知りもせず
行った浦島太郎は
想像だけで幸福を描いていただろう
そして帰った時、
現実が初めから
理想にとっての理想を含んでいたことに
気づかなかったのだろう
ーもう一つの物語ー
私は
男に生まれたかった。
かと言って、
私は女だし中身も女だ。
あえて言うなら
男っぽい女だ。
なぜ男に生まれたかったか?
多分
みんなが納得する様な理由は言えない。
でも、
誰だって
好き嫌いはある様な感覚で
私は自分の性別が嫌いだ。
決して女性が嫌いなわけでは無い。
ただ
自分には自分の性別が合ってないと感じる。
かと言って、
今更「変えたい」訳じゃない。
あぁ、
なぜ神様は私を
女に生まれさせたのだろう。
住む場所も、恋人も、
進路も、職業も自分次第で自由に選べるのに
なぜ生まれた時の性別は選べない?
今のご時世は
ジェンダーとか言われてるけど
なんかそんな堅い感じじゃなくて
人からもそう思われたくなくて
そう、ただ
私が男子に生まれた世界線、
もう一つの物語の中に入ってみたかったんだ
そしたら、男子友達しかいない自分も
もっと楽しめただろうか、
男女の仲にある薄い壁も壊せただろうか
今も友達でいられただろうか
こんなこと考えなくて良かったのかな。
ー紅茶の香りー
高校の卒業式の後、
友人と近所のデパートの地下にある
レトロな喫茶店に入って紅茶を頼んだ。
「明日から会えないんだね」
頬を流れた
しょっぱい涙のせいか
普段は
ストレートしか飲まないのに
今日は
砂糖の入ったミルクティーが美味しく感じた。