11/8/2023, 2:05:21 PM
庭園
破れた鏡を見るのが好きだつた、
まるで溺れて死んだ働き蟻たちの破片が
麻でつくられた手布に包まれている事を
知られたくないわたし、
むかし、むかし、あなたが咲いた時
捨ててしまつた後悔は、わたしの幸せか、
解つている。
小さな砂に擦れた皮
深く被つた今日の夜
垂れた首部が吠え続ける。
9/16/2023, 5:09:10 PM
天廻
月ひかりの束が、ひどくむなしく揺れている。
わたしたちの下に敷かれた、冷たく小さな石畳
幾億も先、この声だけが薄く
帷のように滴り、続いてゆく事、
まるで野晒しにも思えてならない。
くもを紡いできた
いつだつて自分を信じてはいなかつたから、
たぶん明日はきみにも訪れる事はないのだから
諦めてしまえば良い筈なのに。
9/8/2023, 3:14:16 PM
海に浮くそら
波間に沈みゆく一日がかなしけれど
ひとときも居られない、
そんなわたしの脆(よわ)さを嘲笑うなんて。
笑う、なんて。
腹を抱えて仰いだそらから墜ちてくる
とりの羽音が恐ろしい、
明日の糧を隠すわたしはさぞ滑稽な事だろう。
いまも潮の残香を疎ましくおもうんだ
波を向いているとき、暑くはないのに顔を拭う
浜を振り返るときだけ絡まる髪を必死で梳く。今日も
淡い太陽が失せ征く、
波間よ、浮かぶ寂れた靴どもよ、今日も、
今日も、生きました。