キミが時々見せる顔。
唇をギュッと噛み、眉を寄せ、目を閉じる。
その表情が、痛みに耐え、涙を我慢しているようで、見ている僕も胸が痛い。
泣くほどのことじゃない。って思って我慢するより、
声が枯れるまで泣いて、苦しい心を解放してあげよう。
見られたくないなら、そっとしておくし、そばにいて。っていうなら、泣き止むまで抱きしめているから。
1日の始まりはいつも、
「朝だよ、起きて」
キミが僕を起こす優しい声と、コーヒーの香りで始まる。
その日によってコーヒーは、ブラック、カフェオレに変わるけど、キミが起こす優しい声と、仕事に行くとき
「いってらっしゃい。今日もお仕事頑張ってね」
玄関で見送ってくれる笑顔は変わらない。
キミから頑張って。と言われると
「よし。今日も頑張るぞ」
と、気合いが入るから不思議だ。
これからも、1日の始まり方は、変わることなく、このまま続いてほしいと思う。
恋人から夫婦へ、関係が変わる。
同棲してたから、恋人から夫婦。って言い方が変わるだけで、同棲してたときの続き。だと思ってた。
けど、恋人から夫婦に変わって、小さなすれ違いが生まれるようになった。
恋人のときには、好きでいてもらえるように。って頑張ってたけれど、夫婦になったんだし、頑張らなくても大丈夫。なんて、キミに甘えすぎて、ケンカになって…。
でも、ケンカしたことは悪いことじゃなかった。
お互いの気持ちをぶつけ合えたから。
きっとこれから二人で過ごす中で、またすれ違いが起こることもあるよね。
そんなときには、とことん話し合って、お互いの気持ちをさらけ出そう。
僕はキミが大好きで、ずっと一緒にいたいから。
秋晴れが広がる空の下、キミと公園を散歩する。
「デート、公園で良かったの?」
手を繋ぎ、のんびり歩きながら聞いてみると
「うん。…というか…」
キミはピタリと足を止め
「ごめんね。ホントは、遊園地とか、ショッピングモールのお店をいっぱい見て回るとか、苦手なの」
申し訳なさそうに俯く。
「嫌われたくなくて、今まで言えなかったんだけど…」
手を離さないで。とでも言うように、繋いだ手に力が込もる。
「…そっか」
僕の声に、キミは肩をビクリと震わせ
「ホントにごめ…」
「そうじゃなくて」
顔を上げたキミの声を遮り
「ホントは僕も、あまり好きじゃないんだ」
本音を話す。
「デートの場所。女の子は遊園地好きなんだろうな。って選んでた。けど、乗り物に乗れないわけじゃないんだけど、得意ではなくて…。僕は、動物園とか水族館、プラネタリウムとかが、好きなんだ」
僕の話に
「…嫌われるのが怖くて言えなかったけど、ちゃんと話せば良かったね」
キミは微笑む。
「ホントにね」
お互いに言えなかった本音。伝え合えたことで、僕たちの心は秋晴れの空のように、キレイに晴れたのでした。
たくさんの星たちが彩る夜空を
「すごい、キレイ」
見上げながら、キミは、はしゃいでいる。
「こんなにキレイな星空、初めて見たよ。連れてきてくれてありがとう」
星たちに負けないくらいの、キミの輝く笑顔に
「キミと結婚したいな」
不意に、言葉がこぼれた。
「え?」
驚いたのは、僕もキミも一緒で。
「不意に出てしまったけれど、キミと結婚したいと思ってる。けど、指輪もないし、こんなプロポーズじゃ…」
僕の言葉に俯くキミに、慌てて言葉を紡ぐと
「…ありがとう。うれしいです」
顔を上げたキミは、ポロポロと涙を流し、微笑んでいた。
忘れたくても忘れられない、忘れちゃいけないキミの美しい姿。
その姿を、僕がずっと守りたい。
結婚した今でも、僕はそう思っている。