「おはよう」
俺に声をかけながら、キミがカーテンをサッと開ける。
「ん?…おはよう」
「今日もいい天気だよ。朝ごはん食べて、どこかに出かけようよ」
ベッドで目が覚めたばかりの俺に、キミは近づくと
「ねえ、行こうよ」
腕を取り、軽く引っ張る。
「わかった、行こうか」
キミのかわいさに負け、体を起こすと
「やった。コーヒー入れとくね」
嬉しそうに寝室を後にする。
「…俺も行くか」
伸びをして、ベッドから降り、リビングに向かうと、コーヒーのいい香りが迎えてくれる。
「ああ、幸せだな」
キミがいて、毎朝起こしてもらって、キミが入れたコーヒーに迎えられる。俺の理想とする光景。
「ああ、けど…」
その理想を手に入れるためには、まず彼女を見つけないと…。
自分の理想とする夢から覚め、俺は強く思うのだった。
涙の理由は、いろいろある。
悲しくて、悔しくて、淋しくて、嬉しくて、楽しくて…。
いろいろあるけど、涙を流すことで気持ちが晴れるし、泣くことは悪いことじゃないと思う。
だけど、キミと過ごす中で、キミが泣くときは嬉しい、楽しいときだけにしてほしいし、してあげたい。
そして、悲しい、悔しい、淋しい涙を流すのは、僕とキミが離れる、住む世界が変わるときだけにしてください。
そうできるように、僕はキミを愛していくから。
ココロオドルほど楽しいとき。
目を赤く腫らすほど泣いているとき。
機嫌が悪そうなとき。
嬉しそうに笑っているとき。
どんなときも、僕はキミのそばにいるよ。
キミのそばで、一緒に笑って、一緒に泣いて、同じ道を歩いていきたい。
だからお願い、僕の手を放さないでいて。
大好きなキミにしか、できないことだから。
仕事がテレワークに移行し、自室にこもって仕事をしている。
一緒に暮らすキミは、ついで。だからと、仕事に出かける前に、俺の分の弁当も作ってくれていた。
美味しい弁当を作ってくれることに感謝をしているし、嬉しいが
「お疲れさま。少し休息しましょ」
と、仕事から帰ったキミが入れてくれたコーヒーと、用意してくれたお茶菓子で、二人で束の間の休息を取る。
この時間が、この上なく愛おしいと感じている。
力を込めて抱きしめたら、折れてしまいそうなほど華奢なキミが、肩を震わせ涙を流している。
「だいじょ…」
大丈夫?と言いかけて言葉を止める。大丈夫じゃないから、泣いているんだから。
なら、泣いているキミを目の前に、僕にできることは…。
そう考え、キミを包み込むように抱きしめると、キミは僕の胸にしがみつき、声を上げて泣き出した。
僕のしてることは間違ってないんだな。と、ホッとする。
これからもキミに頼られる自分でいたい。
そう思いながら、キミが泣き止むまで、優しく髪を撫でたのだった。